“トイレなきマンション”と言われた日本の原発は、使用済み核燃料の全量処理と核燃料サイクルを看板に掲げることで、使用済み核燃料を資源と位置付けています。この方針は、再処理で出る高レベル放射性廃棄物の処分の見通しもないなかでは、問題の先送りでしかありません。
破たんが明瞭になった核燃料サイクルの看板を政府が下ろせない背景には、使用済み燃料問題が顕在化し、原発延命策に波及する可能性があるからです。
現在の日米原子力協定は、使用済み核燃料の再処理など核燃料サイクルの実施を個別に同意を必要としない包括事前同意方式で、日本に認めています。この協定の満期が、2018年7月に訪れます。
米政府はこれまでも日本が余剰プルトニウムを保有することに懸念を持っているとされています。1988年の現協定締結時にも米連邦議会で反発があり、今後、日本が保有するプルトニウムを消費する見通しを示さなければ、議会の承認を得ることは難しい可能性があります。
経営不安定に
現協定には、自動延長の規定があり、この場合は議会の承認は必要ありません。しかし、いずれか一方が6ヵ月前に文書で通告することで協定を終了させることができるようになるため、時の米政府の意向で協定がいつでも終了できるようになります。日本原燃の六ケ所再処理工場(青森県)のような大規模な施設の経営は著しく不安定になります。
再処理工場のプールには現在、満杯に近い約2900トンの使用済み核燃料を保管しています。各地の原発から運び込まれたものです。仮に再処理工場の操業見通しが立たない場合、青森県、六ケ所村、日本原燃との覚書により、再処理工場で保管してある使用済み核燃料の各原発への返還を要求されかねません。
現在、ほとんどの原発も、敷地内にある使用済み燃料プールの空きはわずか。返還を要求された場合、多額の費用をかけて再稼働にこぎつけても、使用済み燃料プールがいっぱいになれば、燃料を交換できなくなるために稼働できなくなります。
返還分を引き受けられない原発も存在します。
国民的議論を
長年、原子力政策を批判してきた元中央大学教授の舘野淳氏は、「もんじゅのあり方を見直す以上、プルトニウムを循環させる核燃サイクル路線の見直し、さらには現在の原発や使用済み核燃料をどうするのか、国民的な議論を起こす必要があります」と指摘します。
(おわり)
(この連載は松沼環が担当しました)
(「しんぶん」赤旗2016年11月2日より転載)