使用済み核燃料から取り出されるプルトニウムは原爆の材料にもなる危険な物質です。日本はすでに約48トンの分離プルトニウムを国内外に保有しています。現在、新規制基準への審査中の日本原燃の再処理工場(青森県六ヶ所村)が稼働すると、取り出されたプルトニウムがさらに増えます。
23回もの延期
再処理工場の完成はトラブルが相次ぎ、これまでに23回延期されてきました。しかし、先月3日には、使用済み核燃料の再処理を着実に実施するための認可法人使用済燃料再処理機構が発足。核燃料サイクル政策に固執する政府は、国民負担のもと、再処理事業の恒久化を図ろうとしています。
これ以上利用の見通しのないプルトニウムの貯蔵は、国際問題に発展しかねません。政府は、プルトニウムを消費するため、通常の原発、軽水炉でプルトニウム、ウラン酸化物(MOX)燃料を利用するプルサーマルを進めると表明しています。
電気事業者は再処理工場で回収されるプルトニウムを確実に利用するために、2015年度までに全国の16~18基の原子炉でプルサーマルの実施を目指していました。しかし、現在プルサーマル運転を実施しているのは四国電力伊方原発3号機のみです。
元日本原子力研究開発機構の岩井孝氏は「プルサーマルによる核燃料サイクルは、実際にはサイクルにはなっていません。循環できないのです。ウランの利用効率はわずかしか上がりません。経済的にも全く成り立ちません」と言います。
現実的でない
岩井氏は、使用済みMOX燃料はプルトニウムの質が悪くなることから、プルサーマルによる再再利用は事実上不可能といいます。また、強い放射能を有する超ウラン元素もラン使用済み燃料以上に増大すると指摘します。
経済性が成り立たない上に安全性の問題も指摘されているプルサーマルを計画通り実施するのは、現実的ではありません。しかし、政府が、破たんしている核燃サイクルの看板を下ろせない理由は、現在の原発の延命策に必要だからです。
(つづく)
(「しんぶん」赤旗2016年11月1日より転載)