政府は、高速増殖炉「もんじゅ」のあり方を見直すにもかかわらず、プルトニウムを循環させる核燃料サイクル路線の見直しは行わず、推進を表明しています。
効率向上主張
高速増殖炉は、政府の描く核燃料サイクル政策の中核的施設でした。もんじゅは、燃料にプルトニウムとウランの混合酸化物を使用。炉心の冷却に水ではなくナトリウムを使うことで、中性子を減速させることなく高速のまま核分裂の連鎖反応を引き起こさせます。理論上、消費した以上のプルトニウムができる、つまり増殖できることから「夢の原子炉」とも呼ばれていました。
これまでの核燃料サイクル計画では、ふつうの原発である軽水炉の使用済み燃料を再処理し、プルトニウムやウランを取り出し、もんじゅで利用。プルトニウムを増殖させます。
さらにもんじゅで作られたプルトニウムを取り出して再度利用することで循環(サイクル)が形成されることから、核燃料サイクルと呼ばれてきました。
この計画には、もんじゅの使用済み燃料の再処理など見通しの立っていない問題がありますが、政府はこの循環により飛躍的に燃料の利用効率を向上できるとしていました。
今回政府は、もんじゅに代わって研究炉である「常陽」の活用やフランスの高速炉「ASTRID(アストリッド)」開発への参画により、研究開発を継続するとしています。しかし、アストリッドはもんじゅとは目的も炉のタイプも大きく異なります。
説明は破たん
2030年代に運転開始を目指すアストリッドは、60万キロワット、放射性廃棄物対策を主な目的としており、プルトニウムの増殖はしません。これでは、燃料の利用効率を飛躍的に高めるとしたこれまでの政府の説明は破たんします。
「もんじゅの廃炉は実質上、高速増殖炉開発の断念を意味します。増殖を断念しながら、核燃料サイクルを継続し、再処理を実施するのは、危険だけでなく全く無意味です」と、核燃料に詳しい元日本原子力研究開発機構研究員の岩井孝氏は言います。
(つづく)