東京電力福島第1原発事故後も避難せず医療を続けている福島県広野町の高野病院(高野英男院長)が東電に賠償を求めて申し立てていた、裁判外紛争解決センター(ADR)での手続きで6400万円の支払いで和解成立したことが、10月24日明らかになりました。同病院の高野己保(みほ)事務長と、申し立て代理人の馬奈木厳太郎(まなき・いずたろう)弁護士が福島県庁で記者会見しました。
高野事務長らによると同病院は原発事故後、双葉郡唯一の医療機関として入院患者や外来患者に医療を提供。事故後、少なくない医療従事者が勤務を断念せざるをえなくなったことなどで医療従事者の確保と定着が課題になり、家賃補助や期末手当支給など経費が増えました。常勤医が院長1人になり、高齢にもかかわらず時間外や救急対応などが劇的に増えました。
東電側は当初、追加支出(期末手当、家賃)や慰謝料を否認。ADRセンターの和解案提示(7月21日)後は追加支出について減額を主張し、慰謝料については否認。高野病院側が東電の対応を批判しつつ修正案を提示し、東電側が20日に応諾しました。
馬奈木弁護士は、双葉郡唯一の医療機関の被害実態が一定評価され、医療提供継続のための支出について原発事故との因果関係が認定されたことなどを評価。高野事務長は「追加的支出などが認められたことはよかったが、和解しても万歳とは言えない」と話しました。
(「しんぶん赤旗」2016年10月25日より転載)