政府は今月(10月)、東京電力福島第1原発の賠償や除染・廃炉費用の国民負担と合わせ、東電の経営改革のあり方の検討を始めました。そのなかで「柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働の遅れ」を東電の経営改革の課題に掲げ、国を挙げて再稼働の音頭をとっています。県内世論の6割以上が再稼働に反対し、カギを握る新潟県知事選が注目されています。(「原発」取材班)
5日に開いた経済産業省の「東電改革・1F(福島第1原発)問題委員会」(東電委員会)の初会合。経済同友会代表幹事はじめ、経団連会長が推薦したというKDDI会長、原発メーカーの日立製作所名誉会長らわずか10人のメンバーに東電の広瀬直己社長がオブザーバー参加して非公開で行われました。
後で公表された政府の資料には、「東電改革の姿は、電力産業の将来を示し」「福島復興、原子力事業、原子力政策の根幹的課題」と明記し、国が関わることを正当化。経営改革の「果実をもって」「福島への責任を果たし、国民に還元する」などと、経営改革を最優先にしています。
この経営改革の一つに位置づけられているのが、柏崎刈羽原発の再稼働です。7月に発表した東電の「経営改革の方針」で5原則の1番目に「柏崎刈羽原発の再稼働の環境整備に全力を尽くす」などとしています。
2014年に策定し、国が認定した東電の「新・総合特別事業計画」では、柏崎刈羽原発6、7号機は14年7月に、その後1、5号機を順次動かす計画でした。原発1基を動かせば、年間約1000億~1450億円のコストが削減できると東電は見込んでいます。
政府の資料は、柏崎刈羽原発の再稼働の遅れなどで「構造的な収支は未改善」などと経営の現状を評価。「福島費用が上振れ」と「柏崎刈羽原発の再稼働が遅延」を今後の課題に挙げ、再稼働問題を前面に出しています。
本末転倒世論に背く東電経営改善・・立石雅昭新潟大学名誉教授の話し
「東電委員会」の資料は、あたかも東電の経営状況の改善が、原発事故の被災者への賠償や福島の復興に欠かせず、その経営改善のために柏崎刈羽原発の再稼働が必須であるかのようにうたっていますが、本末転倒です。福島事故への責任を全うするというなら、東電は事故の収束・廃炉に全力を傾注すべきです。
今、激しくたたかわれている新潟知事選で、世論調査によれば、県民の6、7割が再稼働に反対です。福島事故の際のメルトダウン公表にかかわる東電の隠ぺいは、東電への不信を県民に広げました。東電の企業文化を改善し、柏崎刈羽原発の再稼働で経営改善を進めようとする「東電委員会」の計画は、多くの福島県民の願いに背くものであり、新潟県民としても受け入れられません。
(「しんぶん」赤旗2016年10月15日より転載)