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新型原子炉に住民抗議・・危険・高額・不必要

反EPR(欧州加圧水型炉)デモの中、「ストッブEPR」と書かれた旗を持つ青年ら=10月1日、仏北西部シウビル(飛幡祐規撮影)
反EPR(欧州加圧水型炉)デモの中、「ストッブEPR」と書かれた旗を持つ青年ら=10月1日、仏北西部シウビル(飛幡祐規撮影)

 原発大国フランスで広がる新型原子炉反対運動についてのリポートを、パリ在住の飛幡祐規さんに寄せてもらいました。

仏ノルマンディー

エッセイスト 飛幡祐規さん

 フランス北西部のコタンタン半島(ノルマンディー地方)に建設中の「欧州加圧水型炉(EPR)」について、このところ現地では話題が絶えない。

 12年稼働予定が

 フランスの原発58基のうち、38基は稼働年数30年を超える。EPRは老朽化する原子炉に替わる、より強力で安全な「第3世代」炉という名目で、1992年から開発された。ラ・アーグ核燃料再処理工場の対岸、フラマンビル原発で建設が始まったのは2007年。ところが、稼働予定の12年をすぎても工事は終わらず、費用は当初の予算33億ユーロ(約3800億円)から3倍以上の105億ユーロ(約1兆210O億円)に膨れあがった。

 建設が遅れているのは、工事中さまざまな問題が起きたからだ。中でも昨年4月、原子炉容器のふたと底の部分に「重大な異常がある」と仏原子力安全局(ASN)が発表し、世論に衝撃を与えた。鋼鉄中の炭素濃度が高すぎる箇所があり、耐性の問題が発覚したのだ。問題の部品は、仏原子力大手アレバの子会社で原子炉製造を担うアレバNP社(旧フラマトム)系列のクルゾー社により、2006年9月に製造された。アレバはこの「異常」を知っていたはずなのに、ASNに告知されたのは14年末だったという。

 この部品以外にもEPR建設の過程では種々の欠陥が発覚し、下請け労働者の安全管理(2011年に2人死亡)や、外国人労働者の不当雇用の問題も生じた。

  「現在、工事現場では約4000人が働いていますが、何重もの下請けによる劣悪な労働条件です。稼働したら雇用数は1基で300人分程度。原発が雇用を生み出すなんて嘘です」と、1970年代から地元で反原子力運動を続けるディディエ・アンジェ氏(77)は指摘する。

 今月1~2日の週末、アンジェ氏ら地元の反原発市民団体を中心に、EPRを告発する大集会とデモが建設現場付近のシウビルで開かれた。北西部ブルターニュ、東部アルザス、パリ、南仏など各地から反原発団体や環境保護団体グリーンピース、緑の党、仏左翼党などが参加し、1日のデモでは途中、雨と雹(ひょう)に降られながらも約5000人が原発の入口まで歩いた。講演会やコンサートが催され、活気ある市民交流が行われた。

 「EPRは高価、危険で不必要。最初の予算を再生可能エネルギーの発展に使っていたら、地元に1万人分の雇用がつくれた」と、反核団体・核脱却ネットワークのメンバーは語る。

 「安い電力」破綻

 EPRは事実、「安い電力」を謳(うた)った原発政策の破綻を表している。フィンランドに2005年から建設中のオルキルオト3号機も、予算超過の上、まだ完成していない。フラマンビルのEPR建設は、政令が定めた期限が2017年4月で切れるため、フランス電力(EDF)は3年の延長を要請した。

 遅滞と技術的欠陥、膨大な建設費用にもかかわらず、英国政府は去る9月、EDFと中国広核集団が出資するヒンクリーポイントC原発(EPR2基)の建設を許可した。この計画がEDFの財政破綻をよぶことを怖れて労働組合が反対し、財務部長と理事の1人が辞職したが、仏政府とEDF指導陣は建設を強硬に決定した。計画の支配権をもつEDFに対して英国が保障する電気料金は、欧州連合(EU)の平均値や風力発電価格より高い。

 原子力推進政策はどの国でも、理不尽な意志によって強行されるものらしい。

(「しんぶん」赤旗2016年10月10日より転載)