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“再稼働前提”は幻想・・問われる株主・金融機関の責任/立命館大学環境・エネルギー政策論 大島堅一教授に聞く

国が直轄で除染を行う除染特別地域での生活圏除染=2012年9月、福島県田村市
国が直轄で除染を行う除染特別地域での生活圏除染=2012年9月、福島県田村市

原子力損害賠償支援機構(原賠機構)と東京電力が一緒になってつくった新たな“再建計画”、「新・総合特別事業計画」が、1月15日に茂本敏充経済産業相によって認定されました。原発再稼働が前提で、国から東電への資金支援枠を5兆円から9兆円に増やすことなどが盛り込まれています。どうみればいいのか、立命館大学の大島堅一教授(環境・エネルギー政策論)にききました。
(中東久直)

・・“再建計画”で、原子力は「低廉かつ安定した電力供給」のために「重要な電源」とされていますが・・。

 今回の総合特別事業計画は、もうありえない幻想ですが、まだ原発をそのように位置付けています。大事故を引き起こし、みずからは損害賠償や事故収束のための資金調達ができないにもかかわらず、それがなかったかのように計画を立てているというのが根本的な問題だと思います。

東電が維持されることが日本社会の電力・エネルギー供給にとっていいのだというのを大前提に、東電の力を強くすることだけが目的になっていますよね。

国民負担だけ増

・・柏崎刈羽原子力発電所の1、5、6、7号機は今年7月から順次再稼働とされます。

2007年の新潟県中越沖地震で、柏崎刈羽原発は被災しています。地震、津波による原発事故の問題は指摘されていました。その後も、東電だけの経済性を考えて、根本的な対策はとられなかった。そして、福島第1原発の大事故です。一番痛い目にあっているはずなのに、なぜ、まだ原発にこだわるのか、なにも説得的に展開されていません。

・・“再建計画”では原発再稼働の時期が「大きく遅延する場合には、2014年秋までには(電気料金)値上げが必要」などとしていますが・・。

これは、おかしな話です。国民の負担だけが増えます。東電を経営破綻させなかったという最初のボタンの掛け違いが、すべての問題の発端になっています。一つは東電の株主、貸し手として存在してきた金融機関がまったく責任を負わず、痛い思いをせずにすませてきたという問題です。

被災者への損害賠償は不十分です。東電は、ねぎる、渋る、打ち切る。これも東電を再建させることを前提にしているから、実際の被害から出発するのではなくて、とにかく損害賠償の金額を抑えたいということからきています。

汚染水の問題もそうですね。高い見地からの総合的な対策をとるのではなくて、情報を隠したり、対策が後手後手になったりしています。

電力システムの民主的改革へ

・・“再建計画”では、原発をどんどん動かせば「コスト削減」ができるとしています。どうでしょうか?

東電にとっては、燃料費部分だけを比較すると「原発が安い」。しかも、原発の年間稼働率を現実にはありえないような、85%と仮定し、「コスト減」を強調しています。

原発ゼロにすると、火力発電のたき増しで燃料消費量が増大して費用が増えます。一方、原発を運転するための多額の費用が減ります。今後の火力発電の燃料価格上昇や経営合理化などの要因が加わり、原発ゼロにすると、どうなるかはよく計算してみる必要があります。

今回の計画には、原発ゼロにした場合、電気料金はどうなるのかという検討はまったくありません。いま、国民の選択肢は、原発維持か? なくすのか?です。

原子力損害賠償支援機構法第1条で、「原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施」を目的とするのは当然ですが、「電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営」と原発の運転確保を目的にしていることは問題ですね。運転確保しないと損害賠償もできませんよという構図です。

厳しくチェック

・・今後の東電のあり方や電力の民主的改革の方向は?

原賠機構は、東電と一緒になって“再建計画”をつくるというだけでなく、東電のあり方そのものが、国民にとって適切なのかを厳しくチェックしていく必要があります。情報を公開して広く国民の意見を聞くべきです。

電力システムの民主的改革に向けては、発電事業と送電事業を分離して、すべての発電事業者が送電システムに接続できるよう義務付けるべきです。公正で自由な競争環境をつくるために、政府から独立した非常に強い規制機関を設けることが大切です。すべてのデータを公表して、社会的にみて最も適切な電力供給システムの構築が求められています。

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