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中池見湿地 LNGガス基地計画 学術研究チーム→「尾瀬沼と比較しても中池見は重要」

大坂ガス(株)が敦賀市中池見湿地に計画しているLNG(液化天然ガス)基地に対して、湿地を保全する立揚から学術調査を進めている「『中池見湿地』合同学術調査チーム」(京都、神戸、和歌山、大阪市立、富山の大学合同チーム)が96年12月14日、同市のプラザ萬象で、一般対象に「『中池見湿地』調査中間報告会」開催しました。

河野昭一・京大教授らは昨年、中池見の緊急観察を行った結果、日本の低湿地を代表する大変貴重な場所、「絶滅危惧種の博物館」と言える場所と認識し、「『中池見湿地』合同学術調査チーム」を編成したことを報告しました。

さらに一年間にわたって調査を行って、多くの新しい発見があったとし、「植物多様性条約」締結国としてもガス基地によって消滅させるわけには行かない地域で、尾瀬沼と比較しても中池見は非常に重要な場所であることがわかったと報告。湿地保全の必要性を訴えました。

★水系と水質の多様性を反映

中池見の水系、水質などについて報告した辻彰洋氏(京大、生態学研究センター)は、湿地を流れる沢の水と、わき出る地下水とでは成分が大きく異なっている。この水系と水質の多様性を反映し、今でも百種以上の多種多様の植物が発見されており、調査が進めば新種発見の可能性もあるといいます。

★水性小動物は、一度失われると回復が困難

gengoro あわせて水中小動物について、中池見のような小規模な水域で、食物連鎖の頂点となる水性小動物(水性昆虫、ミミズ、両生類、爬虫類)は、一度失われると回復が困難な生物群であり、その保全・保護には最大限の注意を払う必要があると報告しました。

★複数の植物プランクトンが湿地の水環境をつくる

次に小型浮遊性生物(植物プランクトン)の現状を報告した野崎健太郎氏(京大、生態学研究センター)は、大きな植物に劣らない光合成能力を持つ植物プランクトンも、季節によっては複数の種が特異な状態になって湿地の水環境をつくっていると述べました。

★保全を進めていく上で指針となる科学的情報が豊富に蓄積

nakaike3-2 他に、植物層の調査結果を報告した唐崎千春氏(京都大学・大学院理学研究・植物)は、植物の群の多様性から、環境の多様性を観測できること。多様な水分条件と土壌の性質が複雑に合わさって、多様な環境を生み出していること。中池見は湿地周辺の山々からの地下水によって維持されていること。人の手によって撹乱(草刈り、踏みつけ、耕作のどの農作業)の必要な植物と、そうでない植物が同時に存在していることを解明し、中池見の多様性は、地形と植物と人間の手によってつくられたと。よって、中池見など低湿地の保全・保護を進めていく上で指針となる科学的情報が豊富に蓄積されていると述べました。

★湿地の持っている価値を認識すると同時に後世に譲り渡していく上でかかせない仕事

最後に総括的に保全生物学の問題について報告した河野昭一・京大教授は、「湿地の植物の全体像がわかっているかというとそうではない。わかっていないものの方が圧倒的に多い。特に、湿原とかこういう特異的な環境の生き物に関して、低湿地に関する研究は非常に少ない」
nakaike3-1 したがって、「中池見の調査結果は歴史的に、その分野の最も重要な記録になる部分を含んでいる」と述べました。
また、今回の調査を「湿地の全体像をつかむには時間がかかる。一、二年かけて水系の全体の姿を把握し、そこに生きている生物の生活状況を把握し、湿地の持っている価値を認識すると同時に後世に譲り渡していく上でかかせない仕事である」と湿地を保全する立揚から学術調査の意義を訴えました。
次に中池見の価値について、「尾瀬沼の自然の価値がわかったのは、学術調査を総合的にやる中ではじめて全体が明らかになってきて、開発が中止になったように、中池見湿地の価値というのは、これから進む研究の中で新事実が出てくるだろう」と述べ、その調査では「未知の生物の発見もさることながら、生物が生活をしている全体像をつかむ上で、最も基礎的な情報が集められていない中で、中池見は重要な場所」と中池見の価値を述べ、重ねて湿地保全の必要性を訴えました。

★はじめに計画ありきというのはあまりに乱暴

最後に行政に言いたいこととして、「常にゼロの視点で受けとめる観点がないと、はじめに計画ありきというのはあまりに乱暴である。そういう視点では大事な仕事は達成できない。まして、国民の税金を使って仕事に当たるについては、別の意味での国民に対する責任があると思う」
「ガスとか電力とか公益性のある事業をやるに当たっては国民のいろんな層の理解を得て進める必要があると私は思う。単なる企業活動とか事業の拡張という次元でとらえられない問題を含んでいるということを共通の認識にしていただくことが大事」と厳しい注文をつけました。

★移植実験は疑問、科学的な情報の集積が大前提

会場からは、大阪ガスが来春から保全エリアで動植物の移植を実験的にはじめる問題について疑問視する声が出されました。  これについて河野京大教授は、「移植の行為自体はそう複雑でない。しかし、移植したものがどうなるか予測できない」「移植するというのは、これしか選択肢がないときの方法である。しかし、移植しても世代を維持できる保障はない。生物を維持保護していこうとすれば、ある程度の母集団が必要である。移植をするときに大事なのは、最低その選択肢しかない場合でも、現在とりうる手法を使っての科学的な情報の集積が大前提である」と述べました。

★他の場所で実験を行い、答えを出すのが慎重なやり方

また、「学者などによって、移植によって共生が可能という結論をだしていると予想されるが?」という質問に、共生できるというのなら、データは公開しなければならないと思う。湿地の生活史の科学的データはほとんどない。だからやるとすれば相当年数をかけて、同じようなものを他の場所で実験を行い、答えを出すのが慎重なやり方だ。科学者ならそれくらいの慎重さがあってしかり」と述べ大阪ガスの無責任なやり方を批判しました。

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