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「移植実験」で、中池見湿地の生態系を守れるのか  ・・京大でシンポ

●中池見の貴重な自然環境を生物集団として解明することが移植実験では忘れられている

●建設を白紙撤回しても中池見の自然を残す価値があるのかを含めて、議論を

建設中止を求める立場から報告する、河野昭一・京都大学教授(97年6月5日)
建設中止を求める立場から報告する、河野昭一・京都大学教授(97年6月5日)

大阪ガスが敦賀市にLNG(液化天然ガス)備蓄基地建設を計画している問題で、敦賀市の「中池見湿地の保全のありかたを考えようとする」公開シンポジウム(関西自然保護機構主催)が六月一日午後一時から、京都大学で開かれ、建設を進める大阪ガス社員や、建設反対を訴える敦賀市の住民グループのほか、敦賀市の職員ら約百七十人が参加し、賛成、反対の立場の研究者四人が発表、その後全体で議論しました。日本共産党からは奥山裕二、上原修一両市議と山本雅彦副委員長が参加しました。  中池見湿地は、休耕田と田んぼが中心の湿地で、レッドデーターブックに記載されている植物やさまざまな昆虫が生息していることが多くの研究でわかっています。この湿地に現在大阪ガスのLNG基地建設が予定されており、それにともない約三・三ヘクタールの保全地域をもうけ、同時に周辺の集水域を含めた「自然環境の保全を図る」ことが計画されています。  今回の公開シンポジウムでは、大阪ガスが三年間の予疋で、湿地内の約三・三ヘクタールの区城にデンジソウ、ミズアオイなど計二十四種の植物と、ゲンゴロウ、カワセミなど計十六種の昆虫などをまとめて保全するという「移植実験」について、それで中池見湿地全体の生態系を守れるのかという問題が議論されました。

◆保全エリアで、九割九分の種は保全できる

大阪ガスの敦賀LNG基地環境保全エリア整備専門委員会委員長の杉山恵一・静岡大学教授は「農耕の放棄と耕作の継続によって貴重な植物が発生した。このまま耕作放棄、放置が進めば〃ヨシ原〃になり、失われるという認識をもった」しかし、移植実験を通じて、保全エリアで「がい然性として九割九分の種は保全できるのではないか」と述べました。また、森本幸裕・大阪府立大学教授は、「LNG基地建設がさけられないのなら、自然的景観を残せないか。どこまでできるか考える必要がある」とし、移植で湿地全体に類似した生物環境をつくることは可能と述べました。そのさい「移植しただけではダメで、これまでの営農作業の手法を尊重した形で維持、管理することが大切だ」と述べました

◆中池見の貴重な自然環境を生物集団として解明することが移植実験では忘れられている

これに対し、建設中止を求める立場から河野昭一・京都大学教授は「地形学的にも地理的にも過去十万年の貴重なデータが見れる場所であり、中池見の貴重な自然環境を生物集団として解明することが移植実験では忘れられている」。中池見のような「生物集団が成熟するには、数千の要素が必要で、六千四百から三万二千の要素がプールされないと次世代が維持されないと言う指摘がある。個体としては残せても集団としては残らない」と指摘し実験中止を求めました。また、「生物学者として、中池見湿地の価値について、「日本にこれだけの価値ある低湿地が残されていることの確認をする必要があると思う。今進められようとしている開発工事がなにを次世代に残していくのかもあわせて考えないといけない」と述べ、このシンポで開発の是非を論議するよう求めました。

次に角野康郎・神戸大学助教授は「水草類は、最初は順調に生えていても、消えるときは予兆もなく忽然と消えることがある。自然のメカニズムは単純ではなく、想定していない要因の関与がある」と移植の危険を指摘しました。あわせて、「今日のシンポジウムは、生態学的問題を論ずる場所ですが、技術とか管理とかいう問題だけを論ずるのは中池見の保全という意味では一面的であり、おそらく半分でしかないと思う。人と自然の共存が一般的にいわれるが、中池見はそのことが問われている場所だと思う」と述べ、開発の名で低湿地の環境を破壊してきたが、貴重な自然をもっている中池見はすべて保全すべきで、それがわれわれの基本的態度でなくてはならないという考えを示しました

◆3.3�で中池見の自然が残るのかなんて生態学をやっているものならできないことはわかっている

参加者からは、「森本先生が『やむをえないならば』と条件を付けたが私たちはそういう結論ではない。中池見をどう守るのかということを歴史的に研究してきている」。「杉山先生の今回やろうとしていることはビオトープ(幾つかの生物が集まった集合)を保全地域につくることであって、実際の中池見湿地の生態系(抽象的なものでなく実在するもの)をどのように守るのかということとは無縁だ」。「論点が『保全の手法をめぐって』だったら決着はもうついている。三・三ヘクタールで中池見の自然が残るのかなんて生態学をやっているものならできないことはわかっている」。

◆建設を白紙撤回しても中池見の自然を残す価値があるのかを含めて、議論を

「建設がさけられない、しかたないことなのか、私たちは議論しなければいけないと思う」と次々意見が出され、この計画が地元敦賀市をはじめ多くの人たちが知らないとことで進められてきて、ようやく最近になって計画の全容が明らかになってきた問題が指摘され、環境アセスメントが行われてその結果がすべて住民に公開されて、議論の前提が基地の建設ではなく、あの基地建設を白紙撤回しても中池見の自然を残す価値があるのかを含めて、みんなで議論を行う重要性がこのシンポに要請されました。

◆同様のシンポを敦賀市で開催を

最後に、司会者の村上興正・京大教授は「地元住民の意見も聞き、論議を深めるため今回と同様のシンポを敦賀市で開催するよう」会場に参加したみなさんに呼びかけました。

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