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“被災地はいま”また、牛飼いできる・・福島県の避難指示区域/畜産復興へ動き

福島県楢葉町で牛の飼育を再開した渡辺秀幸さん
福島県楢葉町で牛の飼育を再開した渡辺秀幸さん

 東京電力福島第1原発事故による避難指示が出された地域で、牛の飼育を再開する動きが出ています。東日本大震災から5年半。今も風評被害が消えない中、畜産復興の希望を捨てていません。

 福島第1原発から20キロ圏内の旧警戒区域内にはかつて、約3500頭の牛がいましたが、原発事故を受け大半が殺処分されたり、餓死したりしました。

 福島県楢葉町で林業と肉用牛の繁殖を営んでいた渡辺秀幸さん(55)も、全ての牛を殺処分しました。「移動できないのを長生きさせるより、安楽死させた方が良いのでは」。やむなく殺処分指示に従いましたが、悔しさが残りました。

 国は住宅地周辺を除く山林の除染をしない方針で、林業の再開は不可能。「畜産しかやれることはない」と思い立ち、今年から始まった支援制度を利用して7月から飼育を再開しました。

 町の避難指示は昨年(2015年)9月に解除されましたが、農家は高齢化が進んでおり、地域の畜産業復興は厳しい状況にあります。それでも渡辺さんは、「(自分の)様子を見ていれば、やりたい人も出てくるのでは」と、後に続く人に期待を寄せます。

 来年(2017年)3月末に大部分の避難指示が解除される同県飯舘村の山田長清さん(65)は、今月(9月)6日から肉用牛の繁殖を再開しました。同村の牛は殺処分を免れましたが、農家の多くは避難に伴い牛を売却せざるを得ませんでした。

 山田さんは、村から「2年ほどで戻れるだろう」と聞かされ、一部の牛を県の畜産試験場に預けました。自分の手で牛舎を修繕し、県による空間放射線量の調査などを終え再開にこぎ着けるまで、見通しの倍以上の時間がかかりました。「営農再開は難しいよ」と険しい表情を見せます。それでも、待ち望んだ再開に、「また始める見込みが立って、やる気が出てきた」と前を向きました。

(「しんぶん赤旗」2016年9月14日より転載)