7月の鹿児島県知事選で前知事に大差をつけて当選した三反園訓知事が、九州電力に川内原発(同県薩摩川内市)の運転停止を2回にわたって求めたのに対し、九電は定期点検が近いことなどを理由に応じないと回答、運転を続けています。相次いだ地震などへの住民の不安を背景に、選挙で当選した知事が繰り返し申し入れたのに応じない、九電の姿勢は重大です。定期点検で止まるからなどというのは、停止を拒否する理由にはなりません。原発再稼働を推進する安倍晋三政権の姿勢も問われます。
度重なる要求に応えぬ
三反園知事が川内原発の停止を申し入れたのは、今年4月以来、鹿児島県に隣接する熊本県や大分県など九州地方で地震が続発し、震源の一つとなった断層帯の延長線上に川内原発があることからも、住民の間で不安が高まったからです。三反園氏は知事選でも川内原発の停止を訴え、住民などの反対を押し切って再稼働を容認した前知事を大差で破りました。
三反園知事は就任後、川内原発で事故が起きた場合の避難体制などについても調査するとともに、8月下旬、住民の不安の声に応えるには原発の運転を停止して再点検・再検証するしかないと、九電に運転停止を申し入れました。ところが九電は9月になって運転停止には応じないと回答したため、三反園知事は先週改めて運転の停止を申し入れ、これに対しても九電は再申し入れの翌々日に運転停止には応じないと回答したのです。住民の不安と選挙で選ばれた知事の意向を、文字通り軽んじたものというほかありません。
九電は川内原発の運転停止を受け入れない理由として、原子力規制委員会が九州地方の地震の後も、川内原発の安全性に問題はないとしていることを挙げます。しかし、原発は未完成の技術で、地震などの影響も完全に予測することはできず、原子力規制委や政府がどんなに「合格」といっても事故が起きない保証にはなりません。川内原発が立地する九州には地震を起こす活断層や大きな火山があり、予想がつかない大地震や火山噴火が起きる可能性は十分あります。大切なのは住民の安心や安全であり、住民が不安を指摘している以上、真剣にそれに応えるべきです。
九電が、昨年再稼働した川内原発の1号機は10月、2号機は12月に定期点検で止まるから、検査はそのときやればいいなどといっているのは全くのごまかしです。10月や12月に定期点検で止まるなら、それを数カ月繰り上げられない理由はありません。要は住民の安心や安全に応える姿勢であり、九電にはそうした態度が根本から欠落しているというほかありません。
再稼働優先政策の転換を
三反園知事の申し入れに応える中で、九電は定期点検の中で特別検査を行うことや、住民の避難体制を支援することを言い出しています。しかしそれこそ、川内原発を緊急停止して検討すべきです。
川内原発は四国電力伊方原発とともに国内で数少ない稼働中の原発です。停止要求に従わない九電には、川内原発を一日でも長く運転してもうけを上げるとともに、安倍政権の原発再稼働路線に応える発想しかありません。住民の安心や安全より企業の経営や国の原発再稼働政策を優先させる姿勢こそ、根本から転換すべきです。
(「しんぶん赤旗」2016年9月14日より転載)