事故に備えた原子力損害賠償制度(原賠制度)の見直しを検討している内閣府原子力委員会の原子力損害賠償制度専門部会は8月23日、昨年5月から行われた議論の論点を整理しました。
現行の原賠法は、事故を起こした原子力事業者に対し、事故の過失・無過失にかかわらず上限なく賠償責任を負わせる「無過失・無限責任」を原則にしています。しかし、財界などは「原子力事業者の担い手の確保が重要、事業者にとって予見可能性の確保の観点から賠償責任を制限し、有限責任にすべき」だと主張しています。
論点整理で、焦点の原子力事業者の責任範囲については、「原子力事業者の賠償責任を制限し、有限責任とすべきとの意見がある」とする一方、「故意・過失が認められる事故で責任制限とすることは不適切」などから「現行の制度を維持することが必要であるとする意見がある」と、両論を並べています。
また、現行法の目的には「被害者の保護」と「原子力事業の健全な発達」の二つが掲げられています。論点整理では、「意見を踏まえ、目的の趣旨を整理する」としました。
制度の基本的枠組みでは、原発を活用し続けるとうたう安倍政権のエネルギー基本計画も引用して「原子力事業者の予見可能性」からも議論することを明記しています。9月以降、原賠法などの改定に向けて集中的に議論するといいます。
原賠法の見直しをめぐっては日本弁護士連合会が19日、「有限責任に変更すべきではない」とする意見書を政府に握出しています。
(「しんぶん赤旗」2016年8月24日より転載)