東京電力福島第1原発事故の被災者ら約4000人が国と東電に原状回復と完全賠償を求めた「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ」福島原発訴訟(中島孝原告団長)の第20回口頭弁論が8月24日、福島地裁(金澤秀樹裁判長)であり、原告7人に対する本人尋問がおこなわれました。
陳述したのは軽トラック運転手の男性(桑折町)、造園業の男性(古殿町)、パン屋を営む女性(会津坂下町)、ナシなどの果樹を生産する男性(福島市)、福島市内の元保育園園長、夫が石材販売業(いわき市)の女性、元教員の男性さん(相馬市)の7人。原発事故で受けた被害の実態を訴えました。
農産物を産直カフェに配送していた氏家さんは「放射線を測定しなければ野菜は売れないという負担が生じた。生産者は苦しんでいる。私の願いは、二度と原発事故を繰り返させないでほしいということです。国と東電は自分たちの責任を認め、きちんと責任をとってほしい」と陳述しました。
元保育園園長は「保育園は里山に隣接した地域にあり、自然豊かな場所にあった。思いっきり自然と触れ合う保育をしてきた」とのべ、「全国の支援を受けてやってきた。大変な労力と時間をかけないと子育てができない状況になった。あまりにも負わされた痛手が大きすぎる。福島の人たちに負わされた問題の法外さを考えてほしい」と訴えました。
パン屋の女性が、次男を妊娠したことを知ったのは2011年3月20日ごろでした。「妊娠生活を無事送っていけるのか、喜びよりも不安が先だった」と告発。「町の自然にたくさん触れさせて、外でたくさん遊ばせて、のびのびと育てたかった」と陳述しました。
裁判長は、来年3月の結審をめざすとしました。
(「しんぶん赤旗」2016年8月25日より転載)