東京電力は2月6日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の海側観測用井戸で昨年7月5日に採取した地下水から放射性物質ストロンチウム90を1リットル当たり500万ベクレル検出したと発表しました。過去最高値です。
この井戸(1―2)は、2号機タービン建屋海側にあり、2011年の事故発生直後に高濃度放射能汚染水が海へ流出した場所(地図の★印)のそばにあります。
東電は、誤測定の可能性があるとして、昨年6月以降に採取した海水、地下水に含まれるストロンチウム90の数値を公表していませんでした。今回発表したのは、別の測定器で得られた値だとしています。
一方、全ベータ(ストロンチウム90を含むベータ線を出す放射性物質)の濃度を同90万ベクレルとしていましたが、今回の測定値が正しければ500万ベクレルを上回るはずで、大きく過小評価していた可能性があります。
東電は7日、測定方法を見直した昨年10月より前に採取した水の全ベータの濃度を再測定する方針を示しました。対象は1リットル当たり10万ベクレルを超える汚染水です。
解説 ・・「データ隠し」に等しい
東京電力には、福島第1原発で起きたことについて、迅速に公表し、国民に説明する責任があります。特に、ストロンチウム90は摂取すると骨にたまりやすい性質があり、海へ大量に流出した場合、魚類などへの影響が心配されています。ストロンチウム90の法令限度は1リットル当たり30ベクレルで、今回検出された値はその16万倍以上になります。
これだけ高い測定値を得ていながら「分析中」として半年間も公表せず、データを隠していたといわれてもしかたありません。
半年以上も公表しなかった理由について、ストロンチウム90の測定値に全ベータの値を上回るものがあり、矛盾しているためと、今年1月になって説明しました。全ベータはストロンチウム90を含むため、本来なら上回ることはありません。今回の発表内容からすれば、これまで過小評価された全ベータの値だけを公表していたことになります。
今月5日、ストロンチウム90の特定の測定器の感度設定が誤っていたと発表。6日にようやくデータを明らかにしたものです。
東電はもとより、監督する原子力規制庁の責任も問われます。(神田康子)