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石炭火力発電 汚染排出データ非公開・・環境NPO法人が告発/安上がり、新規参入相次ぐ

 石炭火力発電所の新増設が目白押しです。安倍政権が原発と並んで重要な電源と位置付け、電力自由化で″安い″電源として新規事業者も参入しています。その中には、汚染物質の排出データなどを非公開のまま着工している案件があることがわかりました。環境NPO法人気候ネットワークが明らかにしました。


 

工事工程、汚染物質すべて墨塗りで公開した水島MZ発電所
工事工程、汚染物質すべて墨塗りで公開した水島MZ発電所

 気候ネットワークは報道などで明らかになった新増設48事業のうち、規模が小さいため国や自治体の環境アセスメントの対象になっていない7発電所(別項)について、工事計画書やばい煙に関する説明書を情報開示請求しました。

 その結果、4発電所で、発電技術の性能や汚染物質の排出データ、工事工程などが墨塗りで公開されました。

 とくに関西電力の子会社と三菱商事などが共同で計画する「水島MZ発電所」では、発電技術をはじめ、汚染物質(硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじん)の排出量や濃度、着工・稼働の予定年月まで非公開に。地元紙には「2017年夏稼働」と報道されています。

 公開された他の発電所のデータにも、さまざまな問題が見つかりました。

 石巻雲雀野、鈴川エネルギーセンター火力、名古屋第二の各発電所は、蒸気圧力や温度から発電技術が1950年代に使われていた旧式タイプであることが分かりました。

 このタイプは天然ガス火力の約2・6倍ものCO2(二酸化炭素)を出すため、経済協力開発機構(OECD)が途上国向け輸出支援で制限すべきだと決めたほどです。

 また、汚染物質の排出も多く、仙台パワーステーションでは硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじん、いずれの濃度もすでに稼働中の発電所の約10倍になることがわかりました。

 そもそも小規模なものは大規模に比べCO2排出係数が1割程度大きくなるなど効率の悪さを政府も認めています。政府は、小規模の急増を受けて昨年、環境保全策をテーマに検討会を設置しましたが「滞ることなく検討を行っていく」(2015年12月28日)と結論を先送りしたままです。国民が知ることのできない状態で計画が着々と進んでいます。


環境アセスメント→環境影響評価ともいいます。道路、ダムなど環境に著しい影響をおよぼす恐れのある行為について、事前に環境への影響を調査、予測、評価して、その結果を公表して地域住民など関係者の意見を聞き、環境配慮を行う手続き。火力発電所の場合、出力11・25万キロワット未満は国の環境アセスメント対象外。

 

環境アセス対象外の7発電所

(数字の単位は万キロワット)

◆石巻雲雀野発電所1号

 14・9(日本製紙石巻エネルギーセンター) 宮城県石巻市

◆延岡発電所

 11(旭化成エヌエスエネルギー) 宮崎県延岡市

◆仙台パワーステーション

 11・2(同) 仙台市

◆鈴川エネルギーセンター火力発電所

 11.2(日本製紙)  静岡県富士市

◆名古屋第二発電所

 11(中山名古屋共同発電) 愛知県知多郡

◆名南エネルギーセンター

 3・1(名南共同エネルギー) 愛知県知多市

◆水島MZ発電所

 11・2(三菱化学)  岡山県倉敷市

 

政府は制度改善急け・・気候ネットワーク研究員の伊与田昌慶さんの話

iyota-kikounet 事業者は″競争上、不利になる″と非公開の理由をあげますが、明らかにしたら困るような汚染物質排出の水準なのか、と疑わざるを得ません。

 政府の検討会では、事業者側から″環境アセスの対象になるとビジネスとしては時間がかかりすぎる″などと″公害時代″に逆戻りするような発言が続いています。

 政府は、環境アセスの基準見直しなど制度改善を急ぐべきです。石炭火力発電所は化石燃料の中で、もっとも環境負荷が大きく、小規模に限らず事業の見直しが必要です。

(「しんぶん赤旗」2016年7月25日より転載)