熊本地震の発生から3カ月。日本学術会議がこのほど開いた、防災減災・災害復興に関わる学会による調査・支援活動の報告会で、地震活動について新知見が報告されました。これまでの調査・研究の取り組みが一定の成果をあげたとされる一方、新たな課題も浮き彫りになりました。
日本活断層学会の鈴木康弘・名古屋大学教授は、今回の地震は国の地震調査研究推進本部が注目していた主要活断層が起こしたもので、現地にとって″寝耳に水″の大地震ではなかったことをあげ、「阪神大震災(1995年)以降21年間、地震本部が取り組んできたことに一定の成果があった」と述べました。ただ、それが防災に生きたかという点で「問題が複雑にある」と強調しました。
さらに鈴木氏は、阿蘇カルデラ内や益城町付近の活断層認定が不十分だったこと、「震災の帯」が現れた原因解明の重要性を指摘。熊本地震が示した活断層近傍の複雑な挙動に留意することや、予測の限界をわきまえることが今回の震災の大きな教訓だと述べ、原発の耐震審査で分岐断層を軽視する風潮に警鐘を鳴らしました。
日本地質学会の大橋聖和・山口大学講師は、今回の地震で動いた断層のほとんどが既知の活断層だったと報告しました。しかし、活動間隔についての確実な情報は不足していたと指摘しました。
日本地震学会の岩田知孝・京都大学教授は、震度7を記録した益城町と西原村の地震波形を、阪神大震災を引き起こした地震(神戸)と比較。神戸と益城町で似ている点を指摘しました。波形から再現した西原村の沈下量は2メートルになり、「驚異的な動きをしていることがわかった」と述べました。今後、場所ごとの揺れやすさの違いを調べていくとしています。
(「しんぶん赤旗」2016年7月25日より転載)