安倍晋三政権は、首相自ら先頭に立つトップセールスで、海外へ日本の商品を売り込んでいます。しかし、大企業の利益が最優先で、輸出先の住民の意見はお構いなし。輸出しようとしているものの中には原発や武器まで含まれます。
「わが国の優れたインフラ関連産業の国際展開を強力に支援し、政府のトップセールス等を駆使して受注競争を勝ち技きます」
自民党の参院選公約はそう記し、アベノミクス(安倍政権の経済政策)が掲げる国内総生産600兆円を実現するための手段の1つとしてインフラ輸出を位置付けます。柱の1つが原発です。
原発を輸出するには、輸出先の国と原子力協定を結ぶ必要があります。安倍首相は就任直後から外遊を繰り返し、13年4月にはトルコと、5月にはアラブ首長国連邦との協定に署名。12月にはサウジアラビアと協定の交渉開始で合意しました。15年12月には核不拡散条約(NPT)に入っていないインドと協定締結で原則合意しました。
企業が多数同行
安倍首相のトップセールスには、多くの企業が同行します。これまで12回の外遊に延べ599団体、1968人が同行してきたことが、日本共産党の追及で明らかになっています。
13年4月のトルコ訪問には、同国で原発建設を進めている三菱重工と伊藤忠商事が同行し、両国首脳を交えた経済会合にも出席。原発プロジェクトの優先交渉権を獲得しました。安倍政権は、ベトナムでの原発建設も日本が請け負うことを政府間合意しています。
トルコは世界有数の地震地帯です。トルコでは、建設予定地の市長が反対を表明するなど、住民から強い反対の意思が示されています。
トルコの建設予定地を14年に訪れた国際環境NGO「FoE Japan」の吉田明子さんは、周辺自治体も反対の声を上げていると語ります。懇談した予定地に隣接する二つの町の町長は、ともに1986年に隣国ウクライナで起きたチェルノブイリ原発事故の記憶を挙げ、明確に反対を表明したといいます。
再生可能エネルギーの普及と価格低下によって、世界では火力発電や原発など大型発電が時代遅れになりつつあります。東京電力福島第1原発事故は、世界の原発離れをいっそう加速しています。
東芝が巨費を投じて買収した米原子炉メーカーが2500憶円近い損失を出したように、時代の流れを見誤った安倍政権の原発政策は企業の投資判断も狂わせています。
「死の商人」の道
安倍政権は、これまで武器の輸出を原則禁じてきた「武器輸出三原則」を14年4月に廃止し、他国に武器を売りつけることでもうけを上げる国へと日本をつくりかえようとしています。
ターンブル豪首相との15年12月の首脳会談で、安倍首相は豪州の時期潜水艦建造プロジェクトについて「(豪州の)すべての要請を満たす」と語り、アピールしました。建造を担う三菱重工も、豪州の地元紙に一面広告を掲載。結果的に獲得は逃したものの、官民一体で武器を売り込む姿勢を示しました。
米国製戦闘機F35への製造参画、インドヘの救難飛行艇US2の輸出推進はじめ、安倍政権はこれまで20カ国以上と武器や技術協力について意見交換を実施。「死の商人」の道をひた走っています。(つづく)
(「しんぶん赤旗」2016年6月29日より転載)