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「社長指示」なのに隠蔽否定とは・・東電「炉心溶融」公表遅れ、不十分な第三者委報告/福島第1事故

houkoku16-6-20
東京電力の第三者検証委員会がまとめた報告書

 東京電力福島第1原発事故の直後、清水正孝社長(当時)が、核燃料が溶け落ちる「炉心溶融」(メルトダウン)という言葉を使わないよう社内に指示していた—。炉心溶融の公表まで2カ月かかった経緯を検証した第三者委員会(委員長・田中康久弁護士)の報告書は、公表の遅れに東電トップの関与があったことを明らかにした一方で、意図的な隠蔽(いんぺい)は否定。事実解明も不十分で、徹底した検証が求められます。

(唐沢俊治)

 報告書によると、清水氏は2011年3月14日、記者会見していた武藤栄副社長(当時)に広報担当社員を通じて、「炉心溶融」などと記載したメモを渡し「この言葉は使わないように」と耳打ちさせました。東電社内事故調では、調査担当社員が社長指示を把握しましたが、重要性が低いとして12年公表の報告書に記載しなかったことも分かりました。

 社長指示について報告書は、官邸側からの要請を受けたと推認しています。ところが、誰からどのような要請を受けたかなど解明されていません。「調査権限が限られている」などの理由で、政府関係者に問い合わせをしていないといいます。菅直人元首相は、要請を否定しています。

 事故を検証している新潟県技術委員会に対し東電は、「炉心溶融の定義がなかった」と誤った説明を繰り返しましたが、今年2月、炉心溶融を判断するマニュアルの存在が明らかになりました。

 社長の指示があったことについて泉田裕彦県知事は、「これまで県の技術委員会に対して、虚偽の説明をしていたということであり、極めて遺憾。さらに真実を明らかにする必要がある」とコメントを発表しました。

 また報告書は、炉心溶融の通報がされなかったのは、「炉心溶融」の使用を控えるべきだとの認識が社内にあったためだとしています。

 今後、東電と新潟県が合同で設置する委員会は、東電の隠蔽体質に踏み込んだ厳しい調査が求められています。

 

合同委で検証に努力・・新潟県技術委員会委員で、東電との合同委員会の委員になる立石雅昭・新潟大学名誉教授の話

新潟大学名誉教授 立石雅昭さん
新潟大学名誉教授 立石雅昭さん

 報告書は、当時社長だった清水氏の関与があったと結論付けた点で、一歩前進です。しかし、マニュアルの存在を5年間隠してきたことを「意図的・組織的な隠蔽ではない」とするなど、ほかに何ら新しいものはありません。住民を被ばくさせないことが、事故を起こしてはならない最も重要な目的です。しかし、住民の避難や被ばくにかかわる通報や広報のあり方に関する検証が全く不十分です。こうした点を明らかにするため、合同委員会で最大限努力したい。

(「しんぶん赤旗」2016年6月20日より転載)