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トリチウム処分 「海洋放出案」で地元反発・・議論難航、政府の検討会

648d9aac-0597-455f-ac04-23776e638135 東京電力福島第1原発の汚染水対策で、浄化処理しても取り除けない放射性物質「トリチウム」の処分方法を議論する政府の検討会が、最も安くて時間のかからない方法として「海洋放出」を挙げたことに、漁業関係者を中心に地元が強く反発している。

 政府は風評被害など社会的観点を含め総合的に検討する場を9月末までに立ち上げ、処分方法の議論を進めたい意向だが、調整は難航が避けられず、暗礁に乗り上げかねない状況だ。

 トリチウムは通常の原発の発電の過程でも発生し、基準値を下回れば海への放出が国際条約で認められている。第1原発では現在、敷地内のタンクに約65万トンのトリチウム水が保管されており、1日400〜500トンのペースで増加。原子力規制委員会の田中俊一委員長は、タンクが増え続ければ廃炉作業の支障になるなどとして、希釈して海洋放出すべきだとの考えを示している。

 政府は、①深い地層に注入②海洋放出③水蒸気放出④水素に変化させて大気放出⑤固化またはゲル化し地下に埋設・・の5通りの方法を検討している。費用と所要期間をさまざまな条件を仮定して試算した結果、海洋放出が34億円で7・3年と他の方法より有利な数字が出た。

 試算について経済産業省は「選択肢を絞るものではない」と強調するものの、5月末に福島県いわき市で開かれた漁協の会合で、いわき市漁協の矢吹正一組合長は「海洋放出となったら、今まで試験操業を重ねてきた努力が水の泡だ」と反発。県漁連の野崎哲会長も「(海洋放出に)反対していく」との立場を鮮明にした。

 度重なる汚染水漏れなどでさんざん我慢を強いられてきた地元の政府・東電への不信感は根深い。五つの処分方法では、海洋放出が最も現実的と見る向きが多いが、経産雀の担当者は「処分方法を絞り込むかどうかも含め検討中」と立ち往生している

(「北日本新聞」2016年6月9日より転載)