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偽装再建 東電新事業計画③・・被害者を置き去り

「自民党はもともと東電の賠償に一定の上限を設け、上限を超えた分は国が負担すると主張していた。今回の68条発動はそこに向けた布石だ」

大阪市立大学大学院の除本理史(よけもと・まさふみ)教授は、中間貯蔵施設への国費投入のために原子力損害賠償支援機構法68条が適用された意味合いを、そう強調します。

完全な補助金

68条は、極めて例外的な状況に限って電力会社への事実上の国費投入を認めたものです。返済条項はありません。

これまでの枠組みでは、賠償や除染費用は、国がいったん肩代わりした上で、東電など原子力事業者に請求し、電気料金への転嫁は一部に限定させるので、国民負担が最小化されるというのが建前でした。68条は国から事業者への完全な補助金であり、1・1兆円に上る中間貯蔵施設の設置費用は全て国民負担になります。

法案が審議された2011年、当時の枝野幸男経産相は、68条の適用には相当厳しい要件が付されているとし、「今回の東電の福島事故がこの条文に該当することは想定していない」と答弁していました(2011年10月24日)。福島事故に対する68条発動は、これまでの政府答弁にも反します。

除本氏は、68条の発動は「東電に第一義的責任を負わせ国は後ろに退くという、支援機構法の仕組みが行き詰まっていることの表れだ」と指摘します。

東電が国費投入で延命される一方、事故の被害者は切り捨てられようとしています。東電の事業計画は、賠償額の見通しを総額4・9兆円とし、「賠償額の増加にとらわれず、最後の一人まで賠償を貫徹することを約束する」としています。

除本氏は、東電が見込む賠償額は「自主避難者」をはじめ、本来賠償すべきものを切り捨てることによってつくられた数字で、「本来の被害の大きさに比べれば少なすぎる」とし、次のように批判します。

「福島原発事故の避難者は、もともと暮らしていた土地や日常生活、人生設計など、自分の人生にかかわるものを全て奪われ、避難先での生活再建を強いられている。一方で、原発の再稼働や東電の再建が進められようとしている。自分たちの人生はなんだったのか、置き去りにされているという感覚を非常に強く持っている」

リストラ計画

冷たいのは、被害者に対してだけではありません。事業計画は、経営合理化として50歳以上の社員を対象に千人規模の希望退職の実施を計画。さらに、東日本大震災時に50歳以上だった管理職を500人規模で、役職を外した上で福島に異動させる計画も打ち出しました。

その一方で、東電は事業計画で、「将来の経営を担う若手を含め、有能な人材の流出が高水準で継続するなど、人材面での劣化への対応が急務となっている」とこぼします。

名城大学の谷江武士教授は、「人を大事にしていくという姿勢が東電の経営者にないのではないか。人を大事にしないから若手も辞めていく。非常に冷たい経営だ」と語ります。

「乱暴な経営合理化の背景には、銀行などから融資を受けるためにできるだけコストを削減するという事情があるのだろう」

(つづく)

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