熊本や大分を中心にした九州地方の大地震の発生から間もなく1カ月―。長期にわたって絶え間なく続く地震のなかで被災者の避難生活は続き、住まいを取り戻すどころか、がれきの処理さえままならないのが実態です。そうしたなか被災者の念頭から消えないのは、全国で唯一運転している九州電力川内原発への不安です。安倍晋三政権や原子力規制委員会、九州電力などは原発に影響はないとしていますが、地震が連動し長期にわたる事態さえ十分想定されていませんでした。「地震大国」で原発の運転を続ける不安に、政府や電力会社は向き合うべきです。
「想定外」続いた熊本地震
4月14日の「前震」といわれる震度7の地震発生以来、翌々日の「本震」を挟んで繰り返されてきた熊本や大分の地震は、震度1以上を記録しただけで千数百回に上ります。なかには震度4や5クラスの地震もあります。地震が長期化するなかでも1、2号機が運転を続ける川内原発周辺の住民が不安を募らせ、いまからでも運転を停止すべきではないかとの声を高めているのは当然です。
地震発生直後は川内原発への地震の影響をまともに発表していなかった原子力規制委や九州電力も、住民の声に押され、不安を打ち消すのに躍起です。原子力規制庁が連休前に発表した資料も、(1)今回の地震で観測された地震の揺れは数ガルから十数ガル(揺れの単位)で、原子炉を停止する設定値に比べ小さい(2)川内原発は今回地震を起こした布田川断層、日奈久断層が同時に動いても耐えられる設計になっている(3)未知の断層が動いたとしても最大620ガルの基準地震動に耐えられる―などとあらためて説明したものでした。
原発の危険性を指摘する声に対し、一部メディアで「不安あおる」などの記事も出ていますが、原子力規制委などの説明はあくまでもこれまでの地震についてで、今後も想定の範囲ならということに尽きます。かつてない異常な連続地震に襲われている住民の不安に応えるものではありません。熊本地震のように、大規模な「前震」と「本震」が続き、一つの断層で起きた地震が周辺の断層に影響して長期間にわたり地震が繰り返されることもめったにありません。今回の地震ではあまり動いてない日奈久断層の南側の川内原発に近い部分が動く可能性や、これまで知られていない断層に震源が広がり、もっと大きな地震に発展する可能性も検討する必要があります。
いままで大丈夫だったから、今後もたぶん大丈夫というだけでは無責任の極みです。阿蘇など火山活動活発化の危険や、事故が起きた場合の避難計画への不安もあります。政府や九電は川内原発の運転継続は一切変えないというかたくなな姿勢を改めるべきです。
「地震大国」に原発いらぬ
熊本だけでなく、阪神・淡路大震災や東日本大震災など日本列島と周辺での地震活動が活発になっているなか、世界有数の「地震大国」に原発が林立する危険性は明らかです。日本のようなプレート(岩板)の境界で地震が起きる国で原発が林立する例は、アメリカにもヨーロッパにもありません。
川内原発は「予防的」にでも直ちに停止し、全国の原発は停止したまま廃止に向かうことこそ「地震大国」日本が取るべき道です。
(「しんぶん赤旗」2016年5月10日より転載)