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ゆっくりすべりで隆起 海溝近くの海底・・国際研究グループ

海底圧力計などをニュージーランド北島沖海底に下ろす研究者たち©Takeo Yagi,University of Tokyo
海底圧力計などをニュージーランド北島沖海底に下ろす研究者たち©Takeo Yagi,University of Tokyo

 ″ゆっくりすべり″で、海溝近くの浅いプレート境界上の海底が隆起したのをとらえることに成功した・・。京都大学、東京大学、東北大学の研究者を含む国際研究グループが米科学誌『サイエンス』(5月6日号)に発表しました。プレート境界地震で発生する津波の評価に役立つといいます。

 ゆっくりすべり(スロースリップ)は、海洋プレートが陸のプレートの下に沈み込んでいる場所で起こる現象です。通常のプレート境界地震はプレート境界の固く結びついた領域(固着域)が瞬間的にずれるため激しい振動を生じますが、ゆっくりすべりは固着域が時間をかけてずれるため、激しい振動は発生しません。

 研究グループは、ニュージーランド北島東側の海底に海底圧力計を設置、2014年の9〜10月にかけて海底が1・5〜5・4センチ隆起したのをとらえました。GPS(全地球測位システム)による観測などから、これは、ニュージーランドが乗るオーストラリアプレートの下に東側から沈み込む太平洋プレートの境界でゆっくりすべりが起こったためとわかりました。

 このときのゆっくりすべりは、固着域が15〜20センチずれて起こったもので、地震の規模を示すマグニチュードで6・8に相当するといいます。

 海底の隆起が観測されたのは、太平洋プレートが沈み込んでいるヒクランギ・トラフ(海溝)から近く、プレート境界がそれほど深くない場所の上です。2011年3月の東北地方太平洋沖地震では、浅いプレート境界がすべって海底が大きく変動したことが、巨大津波発生の一因だったと考えられています。

(「しんぶん赤旗」2016年5月8日より転載)