ボランティアガイド「ふくしま花案内人」の河野恵夫(こうの・よしお)さん(75)は「心の桃源郷」と、福島市の花見山公園周辺の風景をそう表現します。
4月下旬、リキュウバイ、アマノガワ(桜)、ウコンザクラ、ツツジなどが咲き誇る「花見山公園」。「ぜひ福島に来て、見て、食べてほしい」と願っています。
■観光客数は減少
「ふくしま花案内人」ボランティアを始めて13年になります。
最高時には32万人の観光客でにぎわった「花見山」ですが、大震災と福島原発事故は観光客の足を遠のかせました。回復傾向にあるものの、昨年(2015年)は27万人ほどです。
「花見山」は、福島市渡利の阿部一夫さん(64)ら15軒の園芸農家が、花木畑約30ヘクタールを花の名所に育て上げた地域を指します。
阿部一夫さんの父、一郎さん(故人)は、1935年ごろから雑木林を切り開き、丘陵地をくわ1本で開墾。花木を植えてきました。育った花木は、色とりどりの花をつけて評判になりました。
59年、自分の花木畑を無料開放。「花見山公園」と名付けてトイレや傘などを用意。美しさに魅せられた写真家の故秋山正太郎さんは、毎年訪れて「福島の桃源郷」と全国に紹介して観光地としても有名になりました。
地域全体で花々を育て、「シーズン中は、景観に配慮して洗濯物に気を配り、朝のゴミ出しにも観光客が来ていない早朝に出し、環境を大切にしています」。
東日本大震災で河野さんの自宅は半壊。「熊本の地震の怖さがよく分かります。福島の教訓が生かされていないように思えます」といいます。
■もてなしの心で
河野さんら花案内人は、大型連休が終わるころまで観光案内をします。「花見山公園を無料開放している阿部さんをはじめ、地域の方が出を大切に守っている優しさ。福鳥人のおもてなしの心を感じてください。花見山公園は毎日来てもらってもあきません。福島の自然のすばらしさ、リンゴやモモの果物の香りで満たされます」
ベッドで寝たきりの人がストレッチャーに乗って花見山に来たことがありました。河野さんが案内しました。
「生きる希望や元気をもらったと喜んでくださいました。花見山はすべてを受け止め、心を満たしてくれるところなのです」
河野さんは、憂えています。
「熊本の地震があれほど続いているのに国は川内原発を止めようともしていません。安倍首相は何も学んでいません。消費税が増税になれば観光客は減ります。農家や花卉(かき)生産者はおしなべて大変です。福島のおもてなしの心とは相いれませんね」
(菅野尚夫)
(「しんぶん赤旗」2016年5月2日より転載)