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夏涼しく、冬暖かい 太陽熱利用のエコ住宅・・建物内の温度管理に生かす

 

完成した太陽熱を有効に使うエコ住宅。建て主の楚山さん夫妻(右)と建築家の酒井さん
完成した太陽熱を有効に使うエコ住宅。建て主の楚山さん夫妻(右)と建築家の酒井さん

 太陽熱を有効利用する、空気集熱式ソーラーシステムを取り入れたエコ住宅を東京都内で見学しました。熱利用について自然エネルギー市民の会代表の和田武さん(日本環境学会元会長)に聞きました。

(武田祐一)

 見学したエコ住宅は、空気集熱式ソーラーシステムという技術が使われています。「太陽の熱をそのまま建物内の空気の温度管理に生かす効率のよい仕組みです」と話すのは、この家の設計者、酒井行夫さん(DEN設計工房代表)です。

 集熱式ソーラーシステムは、冬場は昼間に屋根で温めた空気を床下に送り、蓄熱して家全体を温めます。夏は、夜間放射冷却で屋根が冷やされることを利用して、涼風を床下に送り蓄冷します。昼間の熱気は棟から直接外に排出しますが、この熱を使ってお湯をつくることもできます。

 「壁の中は木の繊維でつくった断熱材と可変透湿シートを使い、高気密・高断熱でありながら透湿し、壁のなかは結露しません。『呼吸する壁』です」と酒井さん。

 今回採用したシステムは、既成部品を使用することで費用は100万円ほど(温水器をつけない場合)。

 建て主の楚山利雄さん(71)は「有害なホルムアルデヒドの心配がない自然の木を使った家ができた」と喜びます。妻の真知子さん(64)は「自然の力を生かして快適な生活になるのが楽しみ」と話します。

 見学会は、自然環境や住む人を大切にすることなどをかかげた関東建築ネットワークの主催。これまでも太陽熱を利用する集熱式ソーラーの家を手掛けてきました。

 東京都青梅市にある築16年の住宅もその一つです。この家はソーラーシステムで冬暖かく夏涼しく過ごすことができ、太陽熱で温水をつくる機能も付いています。

 家主の長沢ミエ子さん(70)は語ります。「3月下旬から11月上旬はお湯がとれます。この辺りは冬の最低気温がマイナス7、8度くらいに下がるときもありますが、家の中はほっとする暖かさです。夏は外が30度くらいのときもスーッと涼しく感じます」

 

自然エネルギー市民の会代表、日本環境学会元会長 和田 武さん

・・有効利用する政策を

 太陽熱式ソーラーシステムは、太陽の熱エネルギーを建物内でむだなく使う仕組みで、省エネやCO2削減に有効です。

 日本では、すだれを使ったり、底に木を植えたりして、自然の熱をうまく調整する工夫が伝統的にされてきました。このような考え方を生かしつつ、建築物の断熱性能を高めて熱を逃がさず、活用することが大切です。

 自然のなかに豊富に存在する再生可能エネルギーの積極的な利用は、地球温暖化防止や原発に依存しない社会づくりに不可欠です。

デンマーク 家庭の6割に循環暖房

 しかし、日本では再生可能エネルギー電力普及のための固定価格買取制度が4年前に始まりましたが、欧州諸国と比較すると、熱利用政策は立ち遅れています。

 ドイツは、市民参加で風力発電や太陽光発電などの飛躍的普及が進んでいます。新築住宅に再生可能エネルギー熱利用を義務付ける法律(再生可能エネルギー熱法)があり、ペレットストーブや薪ストーブなどの木質資源の熱利用や、太陽熱、地中熱の利用も進んでいます。

 北欧のデンマークでは熱水を断熱パイプで住宅などに循環させる地域暖房を全国に広げ、いまでは6割の家庭が利用しています。その熱水は電力と熱の両方を生産し、エネルギー効率が高いコジェネレーション(熱電併給)施設から主として供給され、燃料には麦わら、木、バイオガスが利用されています。

 日本の不十分な温室効果ガス削減計画を改め大幅削減を実現するために、再生可能エネルギーの熱利用も積極的に推進する政策を採用するよう求めていきましょう。

(「しんぶん赤旗」2016年4月23日より転載)


一般的な空気式ソーラーシステムの仕組み

(一般社団法人ソーラーシステム振興協会のHPより 転載=山本雅彦)

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