温暖化ガス削減 国連で「パリ協定」署名式 史上最多 175カ国・機構
【ワシントン=洞口昇幸】昨年末の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択された、2020年以降の地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」の署名式が22日、ニューヨークの国連本部で行われました。少なくとも175の国と欧州連合(EU)の代表者が署名し、初日の式典での署名数としては、国際協定史上最多となりました。
署名期間は2017年4月21日までの1年。同協定には、産業革命(1850年ごろ)前からの気温上昇幅を2度未満とし、1・5度未満に抑える努力をすることや、今世紀後半に温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることなどが盛り込まれています。
国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は開幕演説で集まった代表者の数について歓迎した上で、「われわれは時間とのたたかいの中にいる」と指摘。同協定の速やかな発効のため、すべての国が早急に批准するよう強く要請しました。
潘氏は、「むやみに消費する時代は終わった。経済の脱炭素化に取り組まなければならない」と強調。温暖化対策の取り組みは「重荷ではない」と述べ、貧困の根絶や環境関連の雇用創出、女性や子どもの生活改善など多くの利益があり、「持続可能な開発目標の達成のために欠かせない」と訴えました。
同式典日に、パリ協定を導いた気候変動枠組み条約の締約国・機構の9割近くが署名をしたことになります。同協定は、締結した全ての国に温室効果ガス削減目標の提出や5年ごとの見直し、目標達成に向けた国内対策の実施を義務付けています。
協定の発効には世界の温室効果ガス排出総量の55%と見積もられる、少なくとも55の締約国の批准、受諾、承認、あるいは加入が必要です。マーシャル諸島やモルディブ、モーリシャスなど、島しょ国を中心とする15カ国は22日、署名と併せ、批准書を事務総長に寄託しました。
排出量世界2位の米国からケリー国務長官が式典に出席。ケリー氏は地球温暖化の解決に向けて「今日はわれわれが自分自身に再び誓う日だ」と強調。年内に協定の国内手続きを終える意向をあらためて示し、すべての国に同様の行動をとることを呼びかけました。
排出量世界1位の中国の張高麗筆頭副首相は演説で、協定締結に必要な国内手続きについて、中国・杭州での9月の20カ国・地域(G20)首脳会議前に終える方針を明らかにしました。
(「しんぶん赤旗」2016年4月24日より転載)
原発稼働前提やめよ/塩川氏 温暖化対策を批判
日本共産党の塩川鉄也議員は4月19日の衆院環境委員会で、原発の再稼働が前提となっている温暖化対策推進法改定案について追及しました。
政府の「地球温暖化対策計画案」では2030年度の総発電電力量に占める原発の割合を20~22%としています。塩川氏は、原発を20%とするには30基を稼働率8割で動かす必要があるとして、40年超の老朽原発の稼働が前提だと批判しました。
その上で「温暖化対策計画について議論するには東電原発事故の総括こそ必要だ」と述べ、事故費用を質問。現時点での政府の試算は、賠償6・4兆円、事故収束・廃炉費用2・2兆円、除染3兆円、中間貯蔵施設1・1兆円。合計で約13兆円に上ることが明らかになりました。
塩川氏は「この天文学的な損害は、原発のリスクを示している。この事故費用は、加害者の東電が負わず、電気料金や税金という形で国民が負うことになっている。理不尽だ」と主張。丸川珠代環境相は、エネルギー政策は経産省の所管だとして「コメントは差し控える」などと答弁しました。
塩川氏は原発事故被害者の声を紹介し、「甚大な被害を生み出した原発の再稼働を前提としている『地球温暖化対策』は撤回すべきだ」と強調しました。
(「しんぶん赤旗」2016年4月24日より転載)