熊本県や大分県ではかつてない回数の地震が続いて被害が広がり、多くの人々が避難を余儀なくされています。どのようなことが起こっているのでしょうか。
Q 今回の地震の特徴は?
震源が浅く強い揺れ
A 前震とされる4月14日のマグニチュード(M)6・5の地震も、本震とされる16日のM7・3の地震も、熊本県内を北東から南西にかけて走る布田川(ふたがわ)断層帯・日奈久(ひなぐ)断層帯で起こりました。
布田川断層帯は阿蘇外輪山の西側斜面から宇土半島の先端まで延び、長さ約64キロ。日奈久断層帯は北端が益城町付近で布田川断層帯と接し、八代海南部に至り、長さ約81キロです。
前震は日奈久断層帯の北端で起こり、本震は布田川断層帯の日奈久断層帯との分岐点付近で起こりました。
前震、本震を含む一連の地震は、内陸の活断層で起こった地震なので、陸地から離れた海底で起こったプレート境界地震だった2011年3月の東北地方太平洋沖地震(M9・0)とはメカニズムが異なります。
地震が深さ10キロ程度の浅いところで起こっているため、強い揺れが、多くの人々が住み、たくさんの建物が建っている場所を襲っています。
地震ではさまざまな周期の地震波が発生します。今回の地震では、木造家屋や低層の建物が最も揺れやすいとされる周期1〜2秒の成分も強く現れていることから、倒壊などの被害につながっているとみられています。
Q 「横ずれ断層型」というのはどういうこと?
断層境に水平に移動
A 地震には、断層を反対側に引っ張り合う力が働いて起こる「正断層型」や、圧縮する力が働いて起こる「逆断層型」などいくつかのタイプがあります。熊本地震では、一連の地震で、破壊された断層の右側と左側が水平方向へ逆向きに動いていることがわかっています。このような地震が「横ずれ断層型」です。
これは、九州にかかっている力と関係があります。九州の北部は、南海トラフから日本列島の下に沈みこんでいるフィリピン海プレートの影響で北西方向に押されています。これに対し、南部は南西諸島の大陸側の海底にある沖縄トラフの拡大に伴って南東方向に押されています。
このため、大分県から熊本県にかけては「別府−−島原地溝帯」という布田川断層帯・日奈久断層帯を含む構造が形成され、そこでは東西方向へ圧縮する力と南北方向へ引っ張る力が働いています。この両方の力によって、一連の地震が横ずれ断層型となっています。
Q いつまで続く、どこまで広がる?
終息の見通したたず
A 16日の本震が起こった直後から、阿蘇地方や隣県の大分県中部でもM5クラスの地震が起こっています。阿蘇地方の地震が起こった場所では活断層が確認されていませんが、阿蘇山の火山活動による厚い堆積物の影響で存在がわかっていないだけとする見方もあります。大分県中部の地震は、別府−−万年山(はねやま)断層帯で起こりました。
横ずれ断層型の地震が起こった場合、断層の延長線上で活動が活発化することがあります。阿蘇地方の地震も大分県中部の地震も、布田川断層帯の北東側の延長線上です。19日には日奈久断層帯の、前震が起こった場所の南西側でM5・5の地震が発生しました。
内陸の活断層の活動による地震は余震が活発に起こるとされていますが、M3・5以上の地震に限っても、発生した地震の回数は22日午前10時現在で205回と、これまでで最も多かった2004年の新潟県中越地震を上回っています。前震から1週間以上たった今も余震が頻繁に起こっており、終息の見通しはたっていません。日奈久断層帯の南西側では、前震や19日の地震でより強い地震が起こる可能性が高まっているという見方もあります。
Q 日本最大の活断層「中央構造線」への影響は?
新たな圧力の見方も
A 布田川断層帯・日奈久断層帯は、九州、四国、本州を横断する中央構造線の西の端にあたります。すでに、布田川断層帯・日奈久断層帯の地震は、前震や本震が起こった場所から数十〜100キロ離れた阿蘇地方や大分県中部にまで広がっています。中央構造線の、四国の愛媛県から大分県に向かって延びる佐田岬半島付近には、熊本地震の影響で新たな力が加わっているとする見方もあります。
Q 南海トラフヘの影響は?
想定の震源から距離
A 東海から四国、九州の太平洋沖の海底に横たわる南海トラフ(海溝)からは、フィリピン海プレートが日本列島の下に沈みこんでおり、プレート境界では最大M9クラスの巨大地震が起こる可能性があるとされています。熊本地震は内陸の活断層で起こった地震で、地震が発生した場所が想定されるプレート境界地震の震源から離れていることなどから影響はないのではないかとする見方が示されています。
(「しんぶん赤旗」2016年4月23日より転載)