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M6クラス 1年に17回・・日本のどこでも起こりうる/列島活断層だらけ、原発動かす条件なし

熊本地震が示す危険

 「2016年熊本地震」は人々が暮らす土地の真下で起こったため、大きな被害をもたらしました。地震はどのようなメカニズムで起こったのか、ほかの地域で教訓とすべきことはないのか、探りました。

(「熊本地震」取材班)

石垣が崩壊した住宅=4月15日、熊本県益城町(丹田智之撮影)
石垣が崩壊した住宅=4月15日、熊本県益城町(丹田智之撮影)

 今回の地震は真下地震の激しさをあらためて見せつけました。地震の規模を示すマグニチュード(M)は6・5(気象庁の暫定値)で、放出されたエネルギーは2011年3月の東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震(M9・0)の数千分の1、1995年1月の阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震(M7・3)の十数分の1です。

 にもかかわらず、今回の地震ではこれらの地震のときと同じように震度7を記録しました。遠い海の海底で起こった地震などと違い、人が住み、建物が建っている場所のすぐ下の浅い場所で地震が起こると、発生した地震波が減衰しないまま伝わるので、揺れが強くなります。

 今回の地震は、阿蘇外輪山の西側斜面から南西に向かって延びる布田川(ふたがわ)・日奈久(ひなぐ)断層帯の高野−−白旗区間で起こったとみられています。同断層帯は、九州・四国、本州を東西に横断する大活断層「中央構造線」の西の端に位置し、全体が活動した場合、最大でM8クラスの地震が発生する可能性があると政府の地震調査研究推進本部が指摘しています。

 今回の地震はM6クラスでしたが、気象庁によると日本およびその周辺で1年間に起こるM6クラスの地震は17回(2001年から10年までのデータから)です。M6クラスの地震は珍しくないことがわかります。4月1日には三重県南東沖でM6・1の地震が発生しました。このときは震源が陸から遠く離れた海底だったため、最大震度は4でした。14年11月に長野県白馬村で起こった長野県神城断層地震(M6・7)では震度6弱の強い揺れとなりました。

kumamoto-jisin-zu 激しい地殻変動が続く日本列島では、活断層がすべて把握されているわけではありません。2000年10月に起こった鳥取県西部地震(M7・3)は未知の断層の活動によるものでした。まして、M6クラスの地震は日本のどこで起こっても不思議ではないとされています。

 今回の地震は、未確認の活断層が活動しM6クラスの地震が起これば、気象庁震度階級で最も強い震度7の揺れとなる可能性が日本のどこにもあることを示しました。国や全国の地方自治体は、防災体制をいっそう強化する必要があります。

 中央構造線の近傍には四国電力伊方原発があります。安全神話にどっぷりつかって地震に対する備えを怠ったために史上最悪の原発事故を引き起こした東京電力福島第1原発を教訓に、現在稼働中の九州電力川内原発の停止と、それ以外の原発の再稼働を断念し、廃炉にすることが求められています。

 

加速度最大1580ガルの揺れ

地震の影響で瓦が落下した家屋=4月15日午前、熊本県益城町(時事通信ヘリより)
地震の影響で瓦が落下した家屋=4月15日午前、熊本県益城町(時事通信ヘリより)

 4月14日午後9時間26分に発生したマグニチュード(M)6・5の地震で、地表は最大1580ガル(ガルは地震の揺れの強さを表す加速度の単位)の強い揺れに見舞われていたことがわかりました。防災科学技術研究所が益城町の観測点で観測しました。

 一方、東京大学地震研究所は、震源から20キロ以内で500ガルを超え、それより遠いところでは揺れの強さが急速に減衰したと発表しました。気象庁の観測で、狭い範囲で震度7や震度6弱の強い揺れを観測したことと一致しています。

 また、益城町と熊本市の2地点で観測した地震波を周期ごとに解析すると、それぞれの揺れには周期0・4〜0・6秒の短周期成分に加え、周期1〜2秒のやや長い周期成分も強かったことがわかりました。周期1〜2秒の強い揺れは、木造家屋に大きな被害を与えると考えられるとしています。


 

列島活断層だらけ・・原発動かす条件なし

 日本全国では、2000以上の活断層が見つかっています。原発近傍にも多くの活断層が存在しています。

 原子力規制委員会の敷地内断層評価の専門家会合では、日本原子力発電敦賀原発、東北電力東通原発、北陸電力志賀原発の断層について、将来動く可能性があるなどの評価を下しています。しかし、各電力会社は、これらの評価を認めず、再稼働に必要な申請を実施しています。

 これらの断層の評価は、2011年の東日本太平洋沖地震以降、旧原子力安全・保安院が指示したことから、各社による調査が実施されました。3原発以外に関西電力大飯原発や同美浜原発、日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」で調査が実施されました。

 これらの原発敷地内断層の問題は、そのほとんどが以前から研究者などから活断層である可能性が指摘されてきたものでした。それまでは、電力会社が否定し、国も見逃してきたものです。

 しかし、これらの原発以外についても、安全とはいえません。中国電力島根原発に近い宍道(しんじ)断層は、中国電が初めて活断層と認めたのが1998年、断層の長さは8キロでしたが、専門家の指摘などにより審査のたびにその長さが訂正され、当初の約3倍になっています。

 関電高浜原発3、4号機の運転差し止めを命じた大津地裁決定でも、電力会社の断層調査の不徹底さを指摘しています。

 活断層だらけの日本で危険な原発を運転する条件はありません。

(「しんぶん赤旗」2016年4月16日より転載)