日本共産党嶺南地区委員会 > しんぶん赤旗 > 電力は“地産地消”で 市民出資の太陽光発電も・・再生エネの利用・普及ヘ自治体の現状は

電力は“地産地消”で 市民出資の太陽光発電も・・再生エネの利用・普及ヘ自治体の現状は

群馬県中之条町の沢渡温泉第2太陽光発電所(中之条電力提供)
群馬県中之条町の沢渡温泉第2太陽光発電所(中之条電力提供)

 4月1日から家庭用電力の小売りが全面自由化されました。再生可能エネルギー(再エネ)の利用・普及に向けて、各地の自治体もさまざまな取り組みを重ねてきました。現状を見ました。

(青野圭)

 

 環境政策を重視する自治体でつくる「環境自治体会議」(1992年発足。2015年4月末現在、49自治体)のシンクタンク「環境政策研究所」によると、群馬県太田市や東京都世田谷区のように自らが設置者となってメガソーラーなどで発電事業を展開している自治体は、調査した13年時点で公営企業が10件、公営企業以外で19件でした。

多様な支援施策

 ″電力の地産地消″で先駆的な群馬県中之条町は13年、町が設置したメガソーラーによる発電を、民間と共同出資した「中之条電力」で供給を開始。同県の太田市は、12年からメガソーラー発電を始め、15年には民間と共同出資で、新電力会社を設立しました。

 先進的な取り組みで知られる長野県飯田市は、再エネ事業の支援策を盛り込んだ条例を13年に制定。専門家集団を組織してソフト面で支援する体制をつくっています。

 鹿児島県屋久島町は離島という条件のもとで、地元の民間企業が発電した100%自然エネルギー(水力発電)による電力を町や協同組合などが配電する体制を戦後まもなくつくり上げました。

 市民が出資する市民共同の太陽光発電所を、早くも1997年に設置したのは滋賀県湘南市でした。

多い補助金活用

 環境政策研究所は2013年、再エネ関連で過去に報道された147自治体を対象に、再エネ事業に関する全国アンケートを実地しました。(回答は96自治体)

 自治体が採用している再エネ導入施策で最も多かったのは、「国や都道府県の補助金活用(公共施設)」の67件。ほかに、自治体所有地の再エネ事業者への貸与(土地貸し、61件)、自治体所有施設の屋上などの貸与(屋根貸し、43件)などが上位を占めました。再エネ推進の条例を制定した自治体も12ありました。

支援策の終了も

 千葉県成田、香取両市(6月予定)や鹿児島県肝付町(同10月)など、今後も自治体が出資する電力会社の設立が計画される一方で、既存の再工ネ支援策が終了する事例もあります。

 東京都青梅市は、発電施設などの設置費補助制度を13年度で終了しました。「屋根貸し事業」も14年度で終えました。市の担当者は、貸し出す施設が老朽化したことや、「電力の取引価格が下がり、事業展開が難しいのでしょう、手を挙げる(応募する)事業者が少なくなった」といいます。

 同じ都内の調布市には、太陽光発電設備の取り付け費用を補助する制度がありますが、13年度は131件、14年度94件、15年度57件と漸減。市の担当者は「東日本大震災後、急増しましたが、希望者にほぼ行き渡ったのではないか」といいます。同制度への国や都の助成は終了し、今は市の単独事業です。

 

とぼしい国の支援・・電源開示し消費者の選択を

 環境政策研究所の小澤はる奈理事長は「自治体や小規模な市民団体が、自分たちでエネルギーを作っていくことを助けてくれる国の政策は、ほとんどありません」と、再エネ事業をめぐる厳しい現状を指摘。「電源構成を分かりやすく開示して、消費者の選択を促すしくみが必要」といいます。

 「自治体のなかでエネルギーを担当しているのは、大体が環境政策部局です。技術や制度の専門的な知識がないと市民を支援する具体的な動きはとれません。異動がありますから、勉強し成長する期間が取れず、ノウハウを持った人材を育てられません」

(「しんぶん赤旗」2016年4月12日より転載)