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電力自由化と原発延命策 立命館大学教授 大島堅一さんに聞く(上)・・損害賠償に限度額を設ける

再稼動への同意がなされた愛媛・伊方原発
5月に廃炉になる四国電力伊方原発1号機(左橋)=愛媛県伊方町

 安倍政権は、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ原発を将来にわたって使い続けるため、さまざまな原発延命策の具体化を推し進めています。環境経済学が専門の立命館大学の大島堅一教授に聞きました。

(三木利博)

 

 −−事故が起きた時の損害賠償制度で、事業者が無制限の賠償責任を負う現行制度を見直し、賠償責任額に上限を設ける「有限責任化」を電力会社などがねらっています。政府の専門部会でそういう議論が盛んにされています。

責任の有限化

 大島 これも電力自由化後の原発延命策の一つです。有限責任化を求める電力会社は事業をする上で「予見可能性を確保すべきだ」と主張しています。しかし、事故が起きたら13兆円規模の損失を受けることは福島原発事故で明らかとなり、ある程度の予見可能性が十分あります。むしろ予見しているからこそ、無限責任を有限責任化しようとしているわけでしょう。原発のみ、損害賠償に限度額を設けるという正当性はなくなっています。事故のコストは国民にかぶせ、原発で得た利益は事業者にという、まったく間違っています。

 −−国会に提出された「再処理等拠出金法案」についてはどうですか。電力会社が再処理事業に必要な資金を積み立て、必要に応じて積立金を取り崩して日本原燃(電力会社が出資する株式会社)に支払う方式から、日本原燃に事業を委託する新しい認可法人を設立し、そこにあらかじめ必要な資金の拠出を電力会社に義務づけています。

再処理永久に

日本原燃の使用済み核燃料貯蔵プール=青森県六ヶ所村
日本原燃の使用済み核燃料貯蔵プール=青森県六ヶ所村

 大島 原発の使用済み核燃料の再処理が行き詰まっています。そのなかで、電力自由化で電力会社自体が競争にさらされてしまうので、電力会社が今まで支えていた日本原燃を支援できなくなり、再処理事業が続かなくなってしまうと、政府はいいます。これは、再処理が市場経済で成り立たないことを示しています。

 法案は、再処理事業という特定の産業に対して保護策を講じ、再処理事業を電力自由化の影響から切り離すことで、永久化しようとするものです。そもそも再処理は絶対必要なものではありません。行き詰まっている以上、支える必要はなく、早めにやめた方がいい。

 −−政府は、原発を廃炉にした場合の会計制度を見直しました。タービンなどの発電用資産や核燃料の資産価値がゼロになって一度に巨額の損失を計上する必要がある会計制度から、損失を10年で分割処理できるようにしました。

 大島 廃炉会計ルール見直しのねらいは、本来損失計上しなくてはいけない不用なものを資産計上し、それを減価償却費として電気料金で回収できるようにしたことです。この変更は、コストを電気料金に転嫁する総括原価方式の料金制度で初めて成り立つものです。だから電力自由化が進むと成り立ちません。総括原価方式が残っているまでのつなぎです。

 第2弾、第3弾の変更が予想され、電力の小売り会社が支払う送電線の料金(託送料金)で回収する仕組みをつくろうとしています。送電線は再生可能エネルギーも使います。しかし、他の企業の話である原発の解体費用を払わされるのはおかしな話で、資本主義のルールにすら外れています。

(つづく)

(「しんぶん赤旗」2016年4月4日より転載)