全国の原発などで安全設備関連ケーブルが新規制基準に反して分離されていなかった問題で3月31日、違反は、原子力施設は20カ所に上りました。違反が判明したのは東京電力柏崎刈羽原発1〜7号機など6の原発(図)。使用済み核燃料を扱う日本原燃の六ケ所再処理工場も351本のケーブルで違反が見つかりました。
一方、北海道電力と関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、日本原子力発電の6社は調査対象の25カ所でケーブルに問題はなかったと報告。日本原子力研究開発機構も高速増殖炉「もんじゅ」のケーブルに違反はないと説明し、東海再処理工場は調査が終わっていないとしています。
事業者任せの検査限界示す
原子力施設で安全設備関連ケーブルが新規制基準に違反していた問題は、確認作業の多くを事業者任せにすることの限界を示しました。検査を担当する原子力規制委員会は、ケーブルの大半について現場で目視確認をしておらず、新基準への適合性がどう担保されるのかという課題も浮かび上がりました。
問題は東京電力が昨年、柏崎刈羽原発6号機で偶然発見し、自主的に報告したことから始まりました。規制委が沸騰水型原発で柏崎刈羽6、7号機を優先的に審査すると決めた後で、寝耳に水の事態でした。
東電は今年1月の報告書で、ケーブルの敷設状況を自ら確認していなかったと説明。施工図面に誤りがあったことなども明かし、ずさんな管理状況が露呈しました。問題は他の原発でも次々に発覚。規制委は一斉調査を各社に指示せざるを得なくなりました。
一方で規制委は、再稼働した九州電力川内原発1、2号機と、再稼働間近だった関西電力高浜原発3、4号機は新基準に適合しているなどとして調査対象から除外。しかし、規制委が再稼働前に現地で目視点検したケーブルは数カ所にとどまり、川内原発では計2カ所でした。
原子力規制庁は「一義的には事業者が確認するべきだ。われわれが見た範囲でも問題はなかった」と説明。事業者側に確認作業の見落としなどがあった場合、規制委は再稼働の前に気付くことができるのか。明確な答えは出ていません。
原子力施設のケーブル
原発などの新規制基準では、原子炉内の状況把握や注水作業などを行う安全上重要な設備につながるケーブルが火災で機能を失わないように、分離された系統として管理するよう義務付けています。他のケーブルとの混在を避けるため、隔離用の板などを設置して対策する必要があります。
(「しんぶん赤旗」2016年4月1日より転載)