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電力自由化目前 再生エネ普及には・・小売事業者が語る実情

送配電・価格変動…困難に直面・・6月〜秋に新業者続々

 4月1日から電力の小売りが自由化されますが、再生可能エネルギー(再エネ)の電気を仕入れて小売りする事業で、4月の営業開始が間に合わない事例が多く伝えられています。実情を聞きました。

(青野圭)

東京・新宿 再生エネ発電会社「イージーパワー」社長 竹村英明さん

東京・新宿 再生エネ発電会社「イージーパワー」社長 竹村英明さん
東京・新宿 再生エネ発電会社「イージーパワー」社長 竹村英明さん

 東京・新宿御苑に面したビルの一室に、再エネ発電会社「イージーパワー」の事務所があります。中央にテーブルを配した、こじんまりとした室内。「電力会社」のイメージはありません。

三つの自由を

 電力事業には、主に発電、送配電、小売りの3部門がありますが、イージーパワーは発電会社。今、山梨と千葉で再エネの発電所を建設中です。

 同社社長の竹村英明さんは「誰でも自由に電気を創り、販売し、選べる。この三つが自由にできて、はじめて『電力の自由化』」だといいます。「再エネの電気を買いたい人が買えなければ『自由化』とはいえません」

 太陽光発電の小売代理店の副社長も務める竹村さんは、再エネ電力を送る送配電網の利用制限(接続抑制)や再エネ仕入れ価格の変動(回避可能費用の算定方法の変更)など、この間、再工ネ小売事業者がさまざまな問題に直面していることを指摘します。

 「小売事業者をいっそう困難にするのは、再工ネの固定価格買取制度(FIT)が、原則として送配電事業者しか扱えなくなる法改定です。再エネ小売事業者は、これだけ困難な状況に置かれているのです」

業者を4分類

 竹村さんは、市民電力の普及をめざす「市民電力連絡会」の会長でもあります。

 「4月から再エネの低圧小売事業をスタートさせることは難しいですが、消費者のみなさんには、再エネを中心にした電気を売ろうとする市民的な小売業者を応援してほしい。そういう会社を探して選んでほしい」

 竹村さんは小売業者を四つに分類します。①東京電力の電気を仕入れて売っている東電系②関西電力や中部電力など東電以外から仕入れる他電力系③石油会社や商社などの独立系。そして、④市民再エネ系です。

仕入れ先知る

 「今までの電力会社は嫌だという方は、まず一回切り替えてください。その際、年数の縛りをかけない契約をしてください。6月から秋にかけて再エネ中心の事業者が営業をスタートさせます。その時に切り替えられるように。また、どこの発電所から仕入れているかを聞くことも大事です。明確に笞えないようなら買わないで」と注意喚起します。

 

東京・小平市民「出資型」発電所

売電先を新電力に

マンションの屋上に設置された、こだいらソーラー市民発電所1号機(写真=こだいらソーラーのHPより)
マンションの屋上に設置された、こだいらソーラー市民発電所1号機(写真=こだいらソーラーのHPより)

 東京都小平市のNPOこだいらソーラーは、「3・11」後に4基の太陽光発電所を稼働させています。2013年に稼働した1号機は、市民が資金を出し合う「出資型」再エネ市民共同発電所として都内で第一号の発電所です。現在、5号機設置に向け準備中です。

 2015年度まで3年連続で下がるなどFIT価格の下落は、「きついが折り込み済み」と理事長の都甲公子さんはいいます。再エネ発電事業者にとっての懸念は、制度改変で、電力会社が送電線にすみやかに繋がない「接続保留」や買電を一時ストップする「出力抑制」をかけやすくなり、再エネの電気が送れなくなるなどの不安が広がることだといいます。

 こうしたなか、同社は再エネを広げようと、今年3月から売電先をこれまでの東電から再エネ小売りを目指す新電力に変更することを決めました。


 

石炭火力の“ブラック”会社要注意・・どんな電力 どう選ぶ

 4月からの電力小売全面自由化により、家庭や小さな事務所・商店などを含めて、電力を売る会社、小売事業者を選べるようになります。どんな電力を、どのように選べばよいのでしょうか。環境問題などを研究している公害・地球環境問題懇談会の佐川清隆さんに書いてもらいました。

大会社が石炭発電計画

公害・地球環境問題懇談会 佐川清隆さん

 1世帯で年間10万円にもなる電気代を、原発事故の反省もなく原発推進に突き進む9電力会社に払い続けたくないと、読者のみなさんはお思いではないでしょうか。

 同時に温暖化の被害が深刻化する中で、石炭や石油発電ではなく、火力発電ならせめて二酸化炭素排出の少ない天然ガスを選びたいものです。

 電源の内訳は公開していない会社が多いですが、「気候ネットワーク」というNGOのホームページで、石炭火力発電の増設計画を見ることができます。

 大電力会社に加え、東京ガスをはじめガス会社・鉄鋼・製紙・商社などさまざまな企業が石炭火力発電所を造ろうとしています。石炭を使う「ブラック」な会社には、「石炭火力をやめたら電気を買ってもいいです」と迫っていきたいですね。

再生エネ=FIT電源

 再生可能エネルギー(再エネ)の電気を買いたいと多くの人が思っていますが、そのための制度は複雑です。

 再エネの電気は現在、固定価格買取制度(FIT・フィット)という制度で買われているものがほとんどです。「FIT電源」と表示され「再工ネ」「環境に優しい」といった宣伝ができません。二酸化炭素排出量も、原発はゼロ表示なのにFIT電源は天然ガス火力より多く表示されます。

 再エネや地域経済・雇用を大事にし、大手資本との提携のない会社を、「パワーシフトキャンペーン」という団体が紹介しています。

 いくつかの生協や自治体などでは、特に震災後、再エネ発電所を造り、それらを含めた電力を売る取り組みが準備されています。

 ただこれらは準備に時間かかかる場合が多いので、まず「ブラック」でない会社に切り替えて、その後理想的な会社が現れるのを待つのも一つの手だと思います。

仲間と学んで賢く選ぶ

 料金メニューもセット販売が増え、多種多様で複雑化しています。例えば「家族で携帯3台通話し放題、毎月10ギガバイトまで通信し放題、電気350キロワット時まで使い放題で月3万円定額」と言われて、皆さんは安いか高いか分かりますか?私には分かりません。

 これは、その家の電気や電話の使い方によります。“一度契約すると2年間解約できない”など、決まった期間使わないと変更しにくいメニューもあります。あらためて、私たちが賢い消費者になることが求められていると思います。

 まずは、領収書などから自分が使っている電気やガス、通信の量と料金を整理してみましょう。その上で、新しい料金メニューで支払い料金が大きく上がらないか、点検しましょう。

 小売事業者選びも「ブラック」企業への要請や抗議も、1人では分からないことだらけの人が多いと思います。仲間と学びながら、賢く電気を選びたいですね。

(「しんぶん赤旗」201年月日より転載)