福島県の東京電力福島第1原発事故の被災者ら約4000人が国と東京電力に原状回復と完全賠償を求めた「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ」福島原発訴訟(中島孝原告団長)で、福島地裁の金沢秀樹裁判長と西村康夫、田屋茂樹両裁判官は3月17日、原告が避難する前に住んでいた帰宅困難区域になっている浪江、富岡、双葉各町の自宅や畜舎などを回って検証しました。原発災害をめぐる訴訟で裁判官が帰宅困難区域の検証に入るのは初めてです。被告の国や東電の関係者も同行しました。
(菅野尚夫)
同日朝、福島市内を出発した一行。浪江町の津島活性化センターで放射能防護服に着替え、線量計を持って、浪江町の佐藤貞利さん(68)、双葉町の福田祐司さん(68)、富岡町に住んでいた60代女性の家を夕方にかけて調査しました。
佐藤さんの家はイノシシなどに荒らされて窓ガラスが割られているなどまったく人が住めない状態でした。牛を150頭飼っていた佐藤さん。「現場には入らないといっていた裁判官が入った。牛の無念を晴らしたい。検証で前にすすんだのではないか。心のこもった判決を望みます」と話しました。
福田さんは「初めて裁判官が現地にきてくれました。もっと早く来てほしかった。他の裁判に生かすきっかけになれば良い。すごい力になりました」と語りました。
検証を求めてきた原告弁護団の馬奈木厳太郎事務局長は「裁判官が放射能防護服を着て現地検証に入ったのは歴史上初めてのことです。裁判官は熱心に耳を傾けてくれました。生活圏が分断されている状況も伝わったとおもいます」と記者団に話していました。
福島地裁は今後、中通りの仮設住宅などでも現地検証をすることにしています。
(「しんぶん赤旗」2016年3月18日より転載)