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“検証 原発避難計画”寝たきり患者どうなる・・過酷事故想定せず便宜的/玄海

14-02-24genkai 原子力規制委員会の新規制基準が施行された2013年7月に適合性審査申請を行い、再稼働に向けた審査が大詰めとされている原発の一つ、九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)。事故時の住民の避難計画はどうなっているのか、佐賀県でみてみました。
(柴田善太)

「寝たきりの患者さんを、どう避難させるのか。現実的には思い当たらない」

佐賀県の唐津赤十字病院の山口和夫事務副部長はこう話します。

同病院は玄海原発から約12キロ地点にある重症患者を受け入れる急性期病院でベッド稼働数は約290。その約6割170人が寝たきりの状態でしか移動できない患者です。

移動手段は

「容体急変の可能性を考えれば救急車でしか避難できないと思う」と山口さん。

唐津市が保有する救急車は8台、佐賀県全体でも50台。避難を想定しなくてはいけない原発からおおむね30キロ圏内(UPZ=緊急時防護措置準備区域=)の県内の病院・診療所は70施設、ベッド数は約3800です。

佐賀県の地域防災計画では病院や高齢者福祉施設の入院患者の避難計画は事業者が策定するとなっています。

山口さんは「現場が1番よくわかるということだろうが、搬送先の決定、移動手段の確保も行政の力なくしてはできない」と強調します。

玄海原発からわずか3キロ地点にある特別養護老人ホーム玄海園(入所者100人)で、放射性物質の流入を防ぐためのフィルターと3日分の電力を確保する自家発電機の設置工事が始まります。

事故時に玄海園に3日間とどまる想定に基づく、国の補助金による町の事業です。施設外の要援護者も同園に合流する計画です。

同園の古川伸子施設長は「3日以上たっても、ここから避難できないこともありうると思うので、追加物資の支援をきちんとしてほしい」といいます。

また、避難計画全体に、避難対象人数などの数値がなく具体化はまだこれからです。

玄海町は、住民の避難は自家用車を基本とし、それが困難な住民は、町や県の手配した車で移動するとしています。

しかし、自家用車以外での避難者の数も、それに基づく車の必要台数も算定していません。避難先の佐賀県小城(おき)市に、各避難場所への避難想定人数も伝えていません。

具体化なし

県の対応をみても、▽交通渋滞と避難の想定時間の試算はこれから▽要援護者について独居高齢者の数は把握していない▽風向きによる避難先・避難ルートの変更を考えず「1ルート1避難先が安全」と強弁・・など問題点が多数あります。その根源に避難の前提になる事故について「個別具体的な事故想定を行っているものではない」として過酷事故を想定せず、便宜的な対応になっています。

日本共産党の藤浦晧(あきら)玄海町議は「二十数年前から、避難計画を作れと主張してきたが、町も県も『玄海原発は大丈夫』と応じなかった。ようやく計画は作るようになったが具体化がなく現実性に欠ける。まだ安全神話に漬かっている」と批判しています。

玄海原発・・1号機は老朽化により緊急冷却時に原子炉圧力容器が破損する危険が指摘され、3号機は危険度の高いプルサーマル運転を行ってきました。2000年以降、7回の事故・故障を地元自治体に報告しています。避難計画策定が必要な周辺おおむね30キロ圏内(UPZ)には佐賀県玄海町、唐津市、伊万里市の約19万3千人、長崎県佐世保市、平戸市、松浦市、壱岐市、福岡県糸島市を加え、計約26万人の住民が生活しています。島も多く事故時の孤立の可能性があります。

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