ツキノワグマ・・経年で含有濃度減少も
ツバメ・・・・・餌通じての取り込み示唆
東京電力福島第1原発事故による放射性物質が野生動植物にどう移行し、影響を与えているのか。その調査研究報告会(環境省主催)が2月19日、東京都内で聞かれました。
福島県環境創造センター研究部の大町仁志氏が、福島県内に生意するイノシシやツキノワグマ、カモ類など鳥獣の放射性物質について報告しました。
大町氏は、2011〜14年度に捕獲された鳥獣の筋肉に含まれるセシウム137の濃度の推移から、同じ森林生態系に生息するツキノワグマとイノシシでは、イノシシの方が濃度の高い傾向があると指摘。ツキノワグマでは年度を経るに従って、濃度の減少傾向がみられるものの、イノシシでは、濃度のばらつきが大きく、年度を経てもはっきりした減少傾向が確認できなかったといい、「生息環境や食性などさまざまな要因がかかわっている」と話しました。
福島大学環境放射能研究所の難波謙二氏は、動物への放射線の影響をみる上で個体ごとの被ばく線量の評価が欠かせないとして、今年1月から、放射線量の高い地域を選び、線量計とGPS(全地球測位システム)を備えた首輪を装着した複数のイノシシについて、外部被ばく線量を測定しようとしていることを紹介しました。
ツバメなどへの放射性物質の影響調査を報告したのは、日本野鳥の会の山本裕氏。
チェルノブイリ原発事故で、ツバメに部分白化と呼ばれる突然変異が放射線量の高い地域で10〜15%の高い割合で生じたと報告されたことを受けて、福島県内で放射線量が比較的高い地域や県外の非汚染地域での部分白化の出現頻度を比較調査しました。調査結果からは、放射能汚染の程度と部分白化の割合に、はっきりした傾向はみられなかったといい、今後は生理学的な手法などを取り入れた研究の必要性を指摘しています。
また山本氏は、福島県南相馬市で昨年5月見つかったツバメの死体から1キログラム当たり約425ベクレルの放射性セシウムが検出されたとして、越冬地から渡来して約1ヵ月の間に、昆虫などの餌を通じてセシウムの取り込みが続いていたことが示唆されるとしました。
福島大学環境放射能研究所のヴァシル・ヨシェンコ氏は、放射線の影響を受けやすいアカマツの形態学的な変化を研究しています。チェルノブイリ原発事故では、ヨーロッパアカマツの若木で「頂芽優勢の消失」という形態異常が確認されているとして、14〜15年にかけて福島県内の複数の地点に生育しているア力マツの幼木を調査。形態異常が発芽後1年間に受けた平均空間線量率に応じて高くなる傾向がわかり、さらに観察数を増やすことで放射線との関係を明確にしたいと述べました。
(「しんぶん赤旗」2016年2月22日より転載)