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消えない原発事故の不安・・検診・相談 全国で/民医連 生活全般で支援続け

『被害者に寄り添いいのちと人権を守るために』問い合わせ全日本民医連 03(5842)6451
『被害者に寄り添いいのちと人権を守るために』問い合わせ全日本民医連
03(5842)6451

 東京電力福島第1原発事故からまもなく5年。全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)は2011年に出した原発問題学習パンフレットの新版『被害者に寄り添いいのちと人権を守るために』を作成し、深刻さを増す被災者の相談活動を強化しようと呼びかけています。

(都光子)

被災地調査重ね

 全日本民医連では事故直後から、避難者に寄り添い、全国各地で診療、検診、相談活動、原発学習会を展開してきました。

 さらに、定期的に福島県いわき市や浪江町、飯舘村などの仮設住宅などを訪ね、家族がバラバラになっていること、子どもたちが外遊びできないことなど、現状と不安な思いを聞いてきました。

 全日本民医連原発事故被ばく対策本部長で医師の竹内啓哉さんは「福島の人たちにとって、賠償、廃炉、地域再建の三つの問題がいま深刻な悩みとなっています。原発事故による不安・リスクが形を変えながら覆い続けている」と指摘しま

視察・支援連帯行動最終日に開かれた、学んだこと感じたことを話し合うグループワーク(全日本民医連提供)
視察・支援連帯行動最終日に開かれた、学んだこと感じたことを話し合うグループワーク(全日本民医連提供)

被ばく量減少へ

 県内外に避難した住民はピーク時には16万2000人、現在も県内に5万5000人以上、県外に4万3000人以上います。

 放射線被ばくによる健康への不安はますます深刻で、今も民医連の被ばく対策本部に相談の電話が寄せられています。

 パンフでは、低線量被ばくについて、しきい値はなく、確率的影響で生じる晩発性障害である、と説明し、被ばく量を減らすための対策の必要性を訴えています。

民医連 パンフ新版

 全日本民医連の稲原資治(もとはる)さんは、「民医連では被災者の甲状腺エコー検査や、健康相談活動など、各地でとりくんでいる」と、全国にいる避難者への支援をしていることを話しました。

 埼玉民医連では、福島県双葉町から依頼されて甲状腺エコー検査を実施。さらに被ばく相談外来を設置し、医療だけでない、被災者に寄り添った活動をしています。沖縄良医連での健診では、大部分が夫を現地に残しての母子避難者のため、無料でおこないました。

 稲原さんは「子どものことが心配なのに、どこにいっても『大丈夫ですよ』といわれた母親が、民医連の相談活動で『なんでも話して』と声をかけられ、涙を流して不安な思いを出してくれた事例もある」といいます。

 パンフには被害者の相談事例をもとに、「『こころのケア』を意識しすぎない」「人生を揺るがす事態が起きた時の感情反応」など気をつけたいことを丁寧に説明。「安心して思ったことが率直に話せる環境が必要です」としています。

原発労働者にも

 原発事故対応にはたくさんの労働者が従事し、いま、現場では経験の少ない労働者も増え、原発労働者にたいする健康問題も大きな課題です。「除染も含め、労働者は全国からきています。子どもや孫などへの遺伝的な影響を心配する人も多く、心理的な側面を含めた支援が必要だ」と竹内さんは指摘します。

 「5年がたとうとする今、政府は賠償打ち切りや帰還をすすめ事故を風化させようとしている。私たちが常に学んでいくこと、福島だけの問題でなく、日本全体の問題だという実感をもつことが大事。いのちと人権を守る運動のためにぜひパンフを活用してほしい」と強調しました。

(「しんぶん赤旗」2016年2月12日より転載)