環境省が、これまでCO2(二酸化炭素)を大量に排出するため「是認しがたい」としてきた石炭火力発電所の新設を一転して容認することが明らかになりました。世界からも「国際的な孤立を深める」(環境団体E3G)などの批判が上がっています。
丸川珠代環境相は2月9日、記者会見し、林幹雄経済産業相と相談したとして両省の新対策を発表しました。
日本では、2012年以来、石炭火力発電所の建設計画が続出しています。電力自由化による価格競争などが原因で、現時点での計画は47基、設備容量2250・8万キロワット(気候ネットワーク調べ)に上ります。先進国では米国が規制方針を持ち、英国は25年に撤廃を決めるなか、新設ラッシュは日本だけです。
石炭火力は、高効率でも発電量あたりのCO2排出量は天然ガスの2倍。昨年11月、丸川環境相は「石炭火力発電は現在の発電量でも30年度の電源構成の想定より多い。さらに多数の増設計画があり、このままでは国の削減目標等の達成が危ぶまれる」と危機感をあらわにしていました。
環境省は昨年6月以降、山口県宇部市、愛知県武豊町、千葉県袖ケ浦市、秋田市、千葉県市原市など5件の計画をめぐる環境影響評価で「是認しがたい」との意見を提出してきました。
新たに示された両者の対策は、総じて業界の自主的な目標だのみで実効性は不明です。
世界が、″今世紀後半には温室効果ガスの人為的排出を実施ゼロにする″などの「パリ協定」に合意しているもとで日本の対応が問われています。
再生エネ増こそ願い・・福島県いわき市の炭火力発電所新増設に反対する準備会代表の半澤紘さんの話
驚き、あきれています。福島では、東京電力と常磐共同火力が「復興」を名目に、原発の代替エネルギーとして、高効率の石炭火力発電を新設しようとしています。
石炭火力の増設は、大気汚染を悪化させます。本当の意味での復興にはなりません。
福島では、再生可能エネルギーの導入を増やし、「地産地消」で復興につなげるべきです。これこそが私たちが描く将来像であり、願いです。
国際的な信用を失う・・気候ネットワーク理事 平田仁子さんの話
日本は、「パリ協定」に賛同しており、先進国として早急に「脱炭素化」を進める責務があります。
石炭火力発電は高効率であっても新規に建設されれば、CO2を何十年も排出し続けることになります。「パリ協定」に盛り込まれている気候変動対策に反するものです。
環境省は、環境を守り、気候変動対策を進める責任を有する省庁です。このような方針転換は本来の責務に逆行します。国際的な信用を失わないためにも撤回すべきです。
(「しんぶん赤旗」2016年2月10日より転載)