米ハワイ州が化石燃料に依存した経済から抜け出すうえで特に重視しているのが、電気自動車の普及です。州都ホノルルをはじめ、主要都市の大型駐車場を訪れると、電気自動車の充電スタンドが設けられています。
人口比全米2位
電気自動車の普及は、州が2008年に再生可能エネルギーを活用する方針を打ち出したことを受けて進みました。担当官庁の産業経済開発・観光省によると、昨年5月時点で電気自動車は約3500台。人口1人当たりではカリフォルニア州に次いで全米2位です。
同省によると州が輸入する化石燃料のうち約3割が地上交通で消費されます。同省エネルギー局のジョナサン・チン研究員は「電気自動車の導入は、化石燃料への依存を減らすうえでも温室効果ガスを減らすうえでも、極めて分かりやすく、実現しやすい目標です」と指摘します。
チン氏は、ハワイ州で電気自動車の大幅活用が見込める背景について、▽米本土と比べて移動距離が限られる▽全般的に天候が良い▽今後再生可能エネルギーによる発電が進むことで電気代が下がる・・ことを挙げました。
「当初は電池切れになったらどうしようと不安でしたが、今は充電スタンドも増えて安心して乗れますよ」。こう話すのは4年前に電気自動車に切り替えたスーザン・グレイエリスさん。オアフ島東部カイルアからホノルルまで毎日、片道約20キロの道のりを電気自動車で通動します。帰宅してから約3時間充電するのが日課です。
グレイエリスさんは「通勤で山を一つ越える必要がありますが、その後買い物などをしても全く大丈夫。本土の州ほど広くありませんからね」と続けます。
駐車料金が無料
州政府は、▽100台以上の駐車場には少なくとも1カ所の充電スタンドを設ける▽州や郡の施設では電気自動車の駐車料金を無料にする・・などの優遇策を取っています。
今後の課題は、現在約440基ある充電スタンドをいかに増やすかだといいます。利用者の多くは、仕事を終えた後の夕方から夜に充電しますが、この時間帯は電力需要のピーク時間と重なります。勤務中の日中に充電できる体制をどうつくるか検討が必要だといいます。
チン研究員は「今では住民の多くが電気自動車を見ても驚かず、理解が広がっています。解決すべきことは多いですが、電気自動車の普及はハワイでのエネルギー転換の柱の一つであり続けるでしょう」と述べました。
(ホノルル=島田峰隆、写真も)
(つづく)
(「しんぶん赤旗」2016年1月4日より転載)