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再生エネ 世界の挑戦・・米・ハワイ州①、パリ・バニュー市、高知・四万十市

脱・全米一の化石燃料依存 〜ハワイ編〜①

米ハワイ州カウアイ島にあるアナホラ発電所(カウアイ島電気事業協同組合=KIUC提供、グレッグ・マツオ氏撮影)
米ハワイ州カウアイ島にあるアナホラ発電所(カウアイ島電気事業協同組合=KIUC提供、グレッグ・マツオ氏撮影)

 米ハワイ州カウアイ島東部の町カパアから車で北に約15分。道路の左側にきらりと光る太陽光パネルの列が見えてきました。同州最大の太陽光発電施設、アナホラ発電所です。昨年11月に送電を始めたばかりです。

 「5万9千枚のパネルで1万2千キロワットを発電します。二酸化炭素の排出量は年間1万8千トン減らせます。州の再生可能エネルギー100%の目標に大きく貢献できますよ」。案内してくれた技師のグレッグ・マツオさんが、パネルを指さしながら話しました。

 離島であるハワイ州は、エネルギー源の大部分を米本土などから移入される石油に頼ってきました。輸送を含めた費用は毎年約50億ドル(約6156億円)。平均の電気代は本土の約3倍にもなり、ガソリン代も割高で、住民や地元企業を圧迫しています。

 その″全米で最も化石燃料に依存した州″がいま、地産地酒の再生可能エネルギーの州を目指して歩み始めています。昨年6月、2045年までに州内の電力を100%再生可能エネルギーでまかなうと決めた法律が成立しました。全米で最も野心的な目標といわれます。

anahora 「石油移入に依存した経済は原油価格に左右され、極めて不安定です。州内で安く発電できるのなら、切り替えたほうがいい。エネルギー面で自立し、移入に使っていた財源を地元のために使い州を発展させよう。これが背景にある考えです」

 こう語るのは、同法を推進したクリス・リー州下院議員。エネルギー・環境保護委員会の委員長です。同議員は地球規模の気候変動対策に触れ、「長期的に持続可能な州をつくることは、私たち政治家の義務であり責任です」と続けました。

 同州は、石油価格が高騰した08年に再生可能エネルギーの活用へかじを切りました。もともと太陽光、地熱、風力などに恵まれた州です。すでに州内の電力の約2割は再生可能エネルギーでまかなうところまできました。新目標を受けて、アナホラ発電所のような挑戦が始まっています。

 一方で送電網の強化や電力貯蔵技術の開発など新しい課題も生まれています。法律成立に協力した非営利環境団体「ブルー・プラネット基金」のフランソワ・ロジャーズ氏は「これからも容易ではありません」としながら、こう力を込めました。

アナホラ発電所の太陽光パネルについて説明する技師のグレッグ・マツオさん(右)とその同僚=2015年12月4日、ハワイ州カウアイ島(島田峰隆撮影)
アナホラ発電所の太陽光パネルについて説明する技師のグレッグ・マツオさん(右)とその同僚=2015年12月4日、ハワイ州カウアイ島(島田峰隆撮影)

 「石油依存を続けて将来の世代につけを払わせるわけにはいきません。

挑戦が不可欠です。再生可能エネルギー100%は実現できる。それを世界に示す良い機会です」(ハワイ州カウアイ島=島田峰隆)=詳報は4日付から連載の予定です。

(「しんぶん赤旗」2016年1月1日より転載)

 

 

 

 


住民参加でエコ都市計画・・パリ郊外 バニュー市

多くの自然光を取り込むよう設計された建設中のオフィスビル=2015年12月3日、パリ郊外バニュー市
多くの自然光を取り込むよう設計された建設中のオフィスビル=2015年12月3日、パリ郊外バニュー市

 自動車の排ガスや工場の排煙による大気汚染が深刻化しているフランスの首都パリ。そのパリ南部のバニュー市では、共産党員市長を中心に住民参加を軸にした環境にやさしい都市計画が進んでいます。

 2005年、地下鉄の廷伸で同市に初めての地下鉄駅の建設が決まりました。1970年代からバニュー市民の念願だった地下鉄駅の建設。それが、自動車中心の生活を見直す転機になりました。

 「環境への負荷を考えないで地下鉄を誘致するだけなら、一時的な経済成長策や交通政策で終わってしまいます。持続可能な発展のためには、大気汚染の原因となる車の利用を減らし、市民が暮らしやすい環境をつくることが必要でした」

 こう語るのは、バニュー市のマリーエレーヌ・アミアブル市長。「市民第一」のまちづくりのため市長が選んだのは、計画段階からの住民参加でした。

 市は、住民集会を繰り返し開きました。都市計画案への市民の意見に耳を傾け、修正案を再び提示しながら、計画を具体化していきました。

マリーエレーヌ・アミアフル市長
マリーエレーヌ・アミアフル市長

 住民の反応も良好で、集会のたびに新たな意見が出ました。集会に参加してきたモハメド・アブバカルさんも「自分が住む町の発展に、責任と自覚が持てる」と語ります。

 こうして完成した計画案には、省エネ機能を備えた公共住宅やオフィスビル、緑地に富んだ公園が盛り込まれました。地下の温水を利用する地熱発電の開発も始まりました。建築資材は近隣の土地から運ぶ。緑地造成のための樹木は地元産を選ぶ。輸送・建設段階から環境・生態系への影響を低減するための方策です。

 バニュー市の取り組みには、仏政府も注目しています。

 長期的な都市開発を目的に設立された都市再生全国機関(ANRU)は15年3月、バニュー市の再開発地区を「国益地区」に指定し、最大2000万ユーロ(約26億円)の補助金支出を決定。気候変動対策のモデル地区として住宅省が選定する「エコ地区」にも選ばれました。

 一連の計画は30年の完了を目指し、現在、市内各所で工事が始まっています。

 教員出身のアミアブル市長は語ります。

 「町の主役は住民です。都市計画は、市ではなく市民の計画であり、環境保全も市民の利益となります。全ての要望を取り入れることは困難かもしれませんが、今後も市民との共同を続けていきます」

バニュー市

baryu-city パリ南郊に位置する人口約3万8000人、面積約4・2平方キロメートルの中規模自治体。 1935年以来、共産党員市長を維持。市議会与党は共産党、社会党、緑の党の3党。地下1500メートル付近には55〜85度の温水層が広がっています。

(パリ=島崎桂 写真も)

(「しんぶん赤旗」2016年1月1日より転載)

 

 

 

 


 

自然と共存する山づくり・・高知県 四万十市

ヒノキを切る秋山梢さん(左)と宮崎聖さん。「チェーンソーは、最初は怖かったけど、もう慣れました」と秋山さん。宮崎さんは「思ったとおりの方向に倒れると『やった?!』って思います」=高知県四万十市
ヒノキを切る秋山梢さん(左)と宮崎聖さん。「チェーンソーは、最初は怖かったけど、もう慣れました」と秋山さん。宮崎さんは「思ったとおりの方向に倒れると『やった?!』って思います」=高知県四万十市

 今年は8月11日が「山の日」として国民の祝日になります。人と自然の共存をめざす自伐(じばつ)型林業に、若い世代の人たちの熱い視線が注がれています。

文・矢守一英 写真・青柳克郎

 高知県の南西部、清流で知られる四万十(しまんと)川。河口から約15キロ上流にさかのぼったところにある7ヘクタールの山林(四万十市)が、秋山梢こずえ)さん(27)の職場です。

 張り詰めた空気の中、防護服に身を包んだ秋山さんが、樹齢40年のヒノキを切り倒しました。作業用の道づくりでは小型のパワーショベルを動かす小刻みなレバー操作も身についてきました。

小型パワーショベルで林の中に作業道を作る秋山梢さん=四万十市
小型パワーショベルで林の中に作業道を作る秋山梢さん=四万十市

 「いい道をつけると林業をやる気になるからね」。ベテラン林業家・橋本光治さん(68)の丁寧な指導のもと、木材を運ぶのに欠かせない作業道のルートのとり方を学びました。

季節を使い分け

林業歴30年以上の橋本光治さん(右から2人目)から、作業道をつくるルートについて教わる若い林業者たち=高知県土佐清水市
林業歴30年以上の橋本光治さん(右から2人目)から、作業道をつくるルートについて教わる若い林業者たち=高知県土佐清水市

 東京都出身の秋山さんは、四万十の自然にひかれて2011年に移住しました。大学で林業を学び、何度もこの地を訪れるうちに、自伐型林業に取り組む仲間と出会い、「女性でもできる林業があること、それが収入にもなることを知り、ここでずっと生きていこうと思った」と振り返ります。

 秋山さんのもう一つの仕事はカヌーの指導員。秋が深まる季節になると、山に入り林業家の顔になります。

 秋山さんを林業に誘ったのは宮崎聖(せい)さん(37)です。地元で生まれ育ち、夫婦でコテージ(民宿)を経営しながら、林業にかかわり生計を立ててきました。「自伐型林業と出合い、生活の歯車がかみ合いだした」と宮崎さん。

 林業を始めて3年目の2人はこの間、山頂に向けてのびる全長約1キロの作業道を自分たちで開設しました。

地域の受け皿に

いい作業道を作ることが自伐型林業の要素です。どんなカーブを描くか、手を広げて考える若い林業者ら=高知県三原村
いい作業道を作ることが自伐型林業の要素です。どんなカーブを描くか、手を広げて考える若い林業者ら=高知県三原村

 自伐型林業は、山の所有者や地域住民らが他人に任せるのではなく、自ら山林を手入れし、収入を得続けられる山づくりをめざします。環境保全に配慮し、大型機械などを使わないため、支出も最小限で済み収入が得やすい仕組みです。参入のハードルが低く小規模経営から始められます。2人は毎月40万円ほどの収入を得られるようになりました。

kouti-tizu 自伐型林業は若い世代を中心に広がり、全国8地域でネットワークが結成されました。関心を持つ人が合宿に集まり「営業のサラリーマンにはないものを得たい」とメンバーが増えています。

 自伐型林業推進協会事務局の上垣喜寛さん(32)は「自伐型林業は、都市部から農山村に来た人たちが地域で暮らすための雇用の″受け皿″の役割を果たしています。人口減少が叫ばれる地方の活性化にも有効で、大きな可能性を秘めたこの取り組みに、国や行政はもっと目を向けてほしい」と話します。

(「しんぶん赤旗」2016年1月1日より転載)