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高浜再稼働差し止め覆す 福井地裁不当決定・・住民抗議、抗告へ/ 国に迎合する不当決定

 福井地裁(林潤裁判長)は12月24日、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働差し止め仮処分決定(4月)に対する同社の異議申し立てを認め、同決定を取り消しました。原発から250キロ圏内の県内外の住民9人の申し立てに応えた仮処分決定に対し、関電がただちに異議申し立てしていたものです。住民側は決定を不服として、年内に名古屋高裁金沢支部に保全抗告します。

 地裁前に詰めかけた住民たちから「福島第1原発事故に何ら学ばない、不当な決定だ」「司法の役割を裏切った」などと、怒りの声が上がりました。

 異議審では、原発の耐震設計の要となる「基準地震動」の策定手法をめぐり、現在の手法に伴う不確かさを考慮しているかが争点となりました。住民側は、基準地震動が、過去の限られたデータから導き出す平均的な値をもとに策定されているため生じる誤差を重大視しましたが、関電は「考慮しない」と答えていました。しかし、今回の決定は、「計算の前提となる各種パラメータ(数値)を十分に保守的な設定としている」などとして、関電の主張のまま採用しました。直下型地震を過小評価している関電の態度にも追従しています。

 4月の決定が、新規制基準自体を「合理性を欠く」とした、基準地震動についても、この10年足らずの間に四つの原発で基準地震動を超えたケースが5回あるとした指摘に、まともに反論できていません。

 今回、関電大飯原発3、4号機(同県おおい町)の差し止めを求めた住民らの仮処分申し立てに対しても、却下しました。

高浜再稼働 地裁決定・・国に迎合する不当決定

 今回の異議審で注目されたのは、高浜原発の運転差し止めを命じた4月の決定(当時・樋口英明裁判長)が原発の新規制基準について「緩やかにすぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されない。新規制基準は合理性を欠く」と指摘し、重大事故に陥る危険性があるとした判断の是非でした。

 しかし、林潤裁判長は、原子力規制委員会の新規制基準に基づく判断に「不合理な点がない」として、高浜原発3、4号機に「安全性に欠ける点があるとはいえない」と再稼働を認める判断をしました。国に迎合する不当決定です。

 4月の決定で、「実績のみならず理論面でも信頼性を失っている」とされた、原発施設の耐震性にかかわる基準地震動(原発で想定される地震の揺れ)についても、今回の決定は、複数の手法を併用するなどして「合理的である」とし、規制委の専門的技術的知見に基づいた判断に「不合理な点はない」としました。

 しかし、今回の決定は、新規制基準の審査の枠組みが機能していれば、基準の合理性が認められるとして、規制委の適合性審査結果や関電の主張を追認したものです。

 住民側が指摘した原発事故時の原子力防災対策が規制委の所掌範囲から除外されている点などは「一般論としての見解」として退けています。

 実際、高浜原発では避難計画が必要な半径30キロ圏内には福井県のほか、京都、滋賀の両府県が含まれ、避難するのは立地県より京都府民の方が多く、渋滞対策などの課題が山積したままです。

 決定は、関電や規制委に対し、「福島事故に対する深い反省と真摯(しんし)な姿勢の下、高いレベルの安全性を目指す努力の継続が望まれる」とあります。しかし、関電は異議審の中で「(運転停止による)経済的損失は、起動が1日遅れるにつき約6億円にものぼる」などと、経済優先の立場を露骨に主張し、再稼働に向けた準備にとりかかってきました。再稼働に前のめりのこの姿勢は、“安全性に欠ける点はない”とした内容に照らして程遠いものです。 

「原発」取材班

福井地裁の決定骨子

 一、高浜原発の地震想定は、詳細な調査や信頼性の高い計算手法で行われている

 一、耐震安全性は、補強工事などで相当な余裕がある

 一、使用済み燃料プールには多様な代替注水・冷却手段が整備され、安全性は確保されている

 一、津波に対しても文献や堆積物調査に基づいた想定がなされ、不合理とは言えない

 一、新規制基準の内容と原子力規制委員会の判断に不合理な点はなく、高浜原発の安全性に欠ける点があるとは言えない

(「しんぶん赤旗」平成27年12月25日より転載)