【ハノイ=松本眞志】
ベトナムで経済発展に伴って電力需要が高まり、風力発電などの再生可能エネルギーが注目を集めています。政府は電力不足を補うため、2014年に原子力発電を着工する予定でしたが、今年1月に「安全問題」を理由に2020年まで延期を決定。再生可能エネルギーの利用が見直されました。
グエン・タン・ズン首相は代替用に火力発電の電力増産を指示しましたが、国内では、風力やバイオマス、水力など再生可能エネルギーによる電力供給の向上にも目が向けられています。特に、長い海岸線を持つベトナムの地の利を生かした風力発電は、化石燃料による発電よりもコストがかからないとして期待されています。ベトナムでは南部のビントゥアン省に風力発電所があります。
ベトナム産業貿易省の再生可能エネルギー部門は2月下旬、ホーチミン市で、米総領事館やエネルギー専門家との合同で将来の電力供給計画について作業部会を開きました。
可能性を強調
現地メディアによると作業部会では、今後のエネルギー資源としての風力発電の潜在的可能性を強調する報告が行われました。
再生可能エネルギー部門の責任者ファン・チョン・トゥック氏は、ベトナムには3000キロもの海岸線があり、特に南部地域に風力発電に適した土地が多数あると紹介。「風力発電による潜在的電力は700万から800万キロワットに達する」と説明しました。
トゥック氏は、国家電力基本計画の目標として、20年までに総電力における再生可能エネルギーの比率を現在の2・5%から5・6%(420万キロワット)に
引き上げ、このなかで風力発電が100万キロワットを供給するとしています。
さらに、30年までに風力発電力を620万キロワットに高める計画だとしています。基本計画は、現在、20年の全発電所による総出力を7500万キロワットと設定しています。
トゥック氏は、「わずか5万4000キロワットを供給している風力発電の現状からすれば目標達成は壮大な挑戦だ」と表明。トゥック氏は、再生可能エネルギー事業に対する政府の支援策について、電力価格などで投資家と折り合わないなど問題点を指摘しました。
再生可能エネルギー専門家であるファン・トゥイ・ズン氏も、国からの資金不足と技術力の欠如、事業推進のための基礎データの不足が、再生可能エネルギー事業の障害になっているとしています。
強力な競争者
作業部会でアジア・太平洋地域で再生可能エネルギー事業にかかわる米国の参加者は、風力発電は石炭や天然ガスを燃料とする化石燃料発電よりもコストがかからないと強調。
「風力電力はベトナムの経済成長にとって、(他の電力事業と比べて)強力な競争者となるだろう」と語りました。