国内外で開く
東京電力福島第1原発事故後の福島県の状況を撮影し、国内外での展示会や講演を通じて「原発はいらない。二度と福島を繰り返してはならない」と訴え続けているプロカメラマンがいます。福島県三春町在住の飛田晋秀(ひだ・しんしゅう)さん(68)です。
同県郡山市の市立中央図書館で8月30日まで開かれている「福島のすがた〜3・11で止まった町」と題した写真個展。防護服を着て帰還困難区域の墓参りをする夫婦の姿、除染で出た廃棄物を詰めた袋から雑草が生えたり、一部破損し中身がはみ出したり・・。訪れた人たちは、ことし撮影したA3判の大きさの写真48点を食い入るように見つめました。
2011年7月以来の写真展や講演会は130回近く、開催地は国内過半数の都道府県、海外5カ国に上りました。「福島の現実はこうなのか」と息をのむ人、「原発をなくしていかないとだめだ」と話す人など、反響を呼んでいます。
それまで職人の撮影を専門にしていた飛田さんは、原発事故直後の11年4月から、東日本大震災・原発事故の被害の実態を可能な限り撮ろうと決めました。
初めは、いわき市や広野町、次いで避難住民を受け入れた地元・三春町の応急仮設住宅を取材。そこで縁ができた富岡町の避難区域に入ったのは12年1月末でした。事故から1年近くたつのに被災状況は当時のままで、住民が戻ることもできない現実を目の当たりにしました。
「事故を風化させない。事故の状況をありのままに見て、福島県民の思いを知ってほしい」と写真を撮り続ける飛田さん。「事故は終わったかのようにして福島を切り捨て、原発再稼働に突き進んでいることが一番悔しい。原発ノーの願いを私たちの世代で終わらせず、子や孫たちにしっかり伝えたい。命ある限り続ける」と話します。
(福島県・野崎勇雄)
(「しんぶん赤旗」平成27年8月23日より転載)