除染の汚染土を庭に保管していることで、1年半前に取材した福島市渡利地区の太田イネさん(90)を訪ねると、汚染土の上にかぶせたシートが青から緑に変色しただけでした。2012年5月に除染した時の汚染土を入れた45リットル容器102個、放射線遮蔽のための土のう1200袋の山が、今も庭を埋めています。
「底でプランターに花を植えるのが気晴らしだったけど、それもできねえ。半分だけでも持ってってくれねかな」とイネさんはいいます。
国の方針なし
福島市は8ヵ所に仮置き場を確保しましたが、公的施設の汚染土だけでいっぱいになる場所もあり、依然として、その確保が最大の課題です。国が責任を負う汚染物最終処分の方法も時期も示されず、中間貯蔵施設も具体化されないなか、仮置き場の保管が長期化するという住民の懸念もあり、なかなか進みません。
福島市の除染企画課の担当者は「国が廃棄物管理をちゃんとやってくれれば、汚染土の宅地保管はやらずにすんだ」と悔しげに話します。
国は直轄して除染を行う11の地域について当初、今年(2014年)3月までに終了するとしていましたが、昨年末、最大3年遅らせることを決めました。現在、除染が終わったのは田村市だけで(同市内で市が除染を行う地域の除染は末完了)、双葉町については計画もできていません。
等しく賠償を
政府は昨年末、「復興加速化指針」「賠償追加指針」を相次いで決定しました。
「復興加速化指針」は、新たな住宅確保への賠償を加えるとともに早期帰還者に若干の賠償を上乗せすること、賠償・除染は東京電力の負担としてきた方針を変更し、税金で東電を救済することが主な内容です。
「賠償追加指針」は、「2017年5月末で避難者への賠償を基本的には終期とする」とした上で、帰還困難区域の住民に1人700万円を支払う、避難指示解除から1年で賠償を打ち切るというものです。
これらの方針は、政府が上からの″線引き″で現在、福島第1原発から20キロを境に、賠償格差を設け住民を分断していることに加え、20キロ圏内の住民を、帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域で線引きし、あらたに格差を持ち込むものです。
20キロ圏外の旧緊急時避難準備区域では東電の賠償は12年8月分で打ち切られ、同地域の住民は経済苦に見舞われています。
賠償の格差は住民間の感情対立まで引き起こしています。
国と東電はすべての原発事故被害者が人間的な生活を取り戻せるように、等しく賠償、支援を行うべきです。
(おわり)
(この連載は、釘丸晶、柴田善太、細川豊史、森近茂樹、矢野昌弘が担当しました)