10日の参院予算委員会で質問した日本共産党の井上哲士議員。福島原発事故の教訓も踏まえずに、原発推進に突き進む安倍政権を正面から批判しました。
井上 「新増設ないといえるか」
経産相 「次のステップだ」
井上氏は、政府の「エネルギー基本計画案」(2月25日決定)が「原発依存を可能な限り低減」としながら、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた矛盾を追及しました。
井上 原発の建て替えや新増設が将来までないといえるか。
茂木敏充経産相 既存原発の安全性確認が最優先の課題。建て替え、新増設はその次のステップだ。
井上氏は「建て替え・増設も否定せず、『低減』というが何の保証もない。計画案は事実上の原発永久使用宣言だ」と断じました。
さらに井上氏は、再稼働するならば、誰が原発の安全性を判断するのかと質問。原子力規制委員会の田中俊一委員長は「『規制基準』に適合かどうかを判断している。(稼働は)地元、事業者、政府の判断」と述べ、安全性判断への関与は否定。一方、安倍晋三首相は「(規制)基準を超えれば『安全だ』という判断がなされる。最も厳しいレベルでの審査に適合する原発は再稼働を進めていく」と矛盾する答弁に終始しました。
井上氏は「誰も責任を持って『安全』だと言えないが、再稼働だけ進める仕組みだ」と指摘。規制委員会が設置した「事故の分析に係る検討会」では、委員自身が「分析は10、20年続けるものになる」「事実関係を明らかにした上で規制に反映させていきたい」(更田豊志委員)と述べていることを示し、「事故の検証もできていないような状況でつくられた『規制基準』で、なぜ再稼働か。新たな『安全神話』だ」と批判しました。
井上「避難完了6日間かかる」
担当相 「長時間にならぬよう磨く」
次に井上氏は、政府が実効性のある原発事故時の避難計画なしで再稼働を進めている問題を取り上げました。
米国などと違い、日本の規制基準は避難計画の策定を再稼働の条件としません。
井上氏は、交通工学の観点で原発ごとの避難計画を分析した「環境経済研究所」(上岡直見代表)のシミュレーション(1面参照)を示しました。原発事故と地震が一緒に起きた複合災害で、国道のみ使用できる場合の原発30キロ圏内の避難完了は、最長の浜岡原発(静岡県)で142時間半(約6日間)かかります。高速道路や主要道路が使えても63時間要します。
井上 東海地震が懸念される静岡県は、地震の避難は「徒歩」とし、浜岡原発で事故が起きた際の避難は「自家用車」だ。地震と原発事故が同時に起きた場合、どう避難するのか。
石原伸晃原子力防災担当相 長時間(かかる)あるいは混乱がないように、絶えずブラッシュアップ(磨き上げる)していく。
井上氏は、「安全神話を前提に(原発)立地したから、避難できる条件にない」と指摘しました。
政府は「エネルギー基本計画案」に、核燃料サイクルを進めることを再び盛り込んでいます。
井上氏は、使用済み核燃料は全国の貯蔵容量約2万トンに対し、すでに1万4千トンが貯蔵されている(表)事実を示しました。その上で、核燃サイクルのなかの再処理で発生する高レベル放射性廃棄物の最終処分場について、住民の反対はいっそう強まっており、立地の選定は困難だと指摘しました。
井上 (原発の)安全神話をばらまいてきた国が大丈夫と言っても住民は信用しない。
経産相 進まない、できないと思考停止に陥ってはいけない。すでに高レベル放射性廃棄物は存在する。
井上 解決もしないのに、再稼働して再処理して核のゴミを増やすのが無責任だと言っている。
井上氏は、地層処分そのものについても、日本学術会議が安定した地層の確認は「現在の科学的知見と技術的能力では限界がある」と報告書を出したことを示し、再稼働と核燃サイクルの中止を求めました。