世界でも有数の原発メーカーである東芝は、その経営トップが巨額の損失をごまかし、不正会計を主導していたことが明るみに出ました。しかもその経営トップが安倍晋三政権の経済財政運営に深くかかわり、原発の再稼働も求め続けてきました。
不正会計が指摘された中には、原発部門も含まれています。取り扱う事業は、時に数十億円に上ります。設計から建設、稼働とその納期も長いのが特徴です。「競争の少ない談合の舞台」であり、「会計操作も容易だ」(東芝OB)といわれます。
2006年に買収した米子会社のウエスチングハウスが受注した案件では、13年度の第2四半期と第3四半期で損失の先送りが判明。この時、田中久雄社長(当時)は巨額損失になれば「大変なことになる」と部下に伝えていました。
損失の先送りについて第三者委員会の報告書は「業績に与える重大なマイナスの影響を回避するため」で、監査委員会の内部統制も会計監査人の監査も「十分に機能していなかった」と断じました。
場面は変わって政府の経済財政運営の司令塔である経済財政諮問会議。安倍政権のもとで再開したこの会議の民間議員に東芝の当時社長だった佐々木則夫氏が任命されました。佐々木氏は、原子力事業部長なども歴任した、いねば原発の専門家です。会議の中で佐々木氏は、原発「利便性」について繰り返し発言していました。たとえば
「今、いろいろな意味で原子力に対する期待があり」、再稼働は「非常に重要」(13年2月28日)といった具合です。不正に手を染めることもいとわず、世論に挑戦し再稼働を迫り続けた東芝のトップ。原発利権の蜜の味は、人としての正常な感覚を狂わせるほどのものなのでしょうか。
(金子豊弘)
(「しんぶん赤旗」2015年7月28日より転載)