国の専門機関に地震調査研究推進本部があります。阪神・淡路大震災後に、「地震に関する調査研究の成果が国民や防災を担当する機関に十分に伝達され活用される体制になっていなかった」反省から作られました。
その部会が2002年に公表した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」の取り扱いが法廷で争われています。この長期評価は、1896年の明治三陸地震と同程度の地震が、三陸北部から房総沖の日本海溝寄りの領域内のどこでも起きる可能性があると指摘したもの。
明治三陸地震の津波は非常に大きく、最大38メートルの高さまで浸水しました。福島原発事故をめぐる千葉と福島の裁判で国と東京電力の責任を問う原告側証人として、長期評価の策定に関わった2人がその重要性を語りました。
うち原子力規制委員会で委員長代理を務めた島崎邦彦氏は長期評価の取りまとめ役。長期評価を理解していれば、大規模な津波が来ることを予測でき、「有効な対策は立てられたはずだ」と強調しました。
高さ10メートルしかない福島第1原発の敷地を超える津波の発生を「予測できた」と述べたのは、元東大地震研究所准教授の都司嘉宣(つじ・よしのぶ)氏。長期評価を採用せず、抜本的な対策を取らなかった国と東電の姿勢を批判しました。
被告の国は、長期評価について「強引な結論を出したのでは」と、国の機関が公表したものを自らおとしめていました。九州電力川内(せんだい)原発で、火山学者など専門家の意見を無視する姿勢と重なります。
(「しんぶん赤旗」2015年7月28日より転載)