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未知の問題に挑む研究者・・福島 低線量被ばくを追って

「生命(いのち)に何が起きているのか~阿武隈山地・科学者たちの挑戦~」(NHK仙台放送局制作のHPより)
「生命(いのち)に何が起きているのか~阿武隈山地・科学者たちの挑戦~」(NHK仙台放送局のHPより)

 福島第1原発事故がもたらした低線量被ばくの影響を究明しようと、取り組む人々がいます。NHKテレビ「生命に何が起きているのか〜阿武隈山地・科学者たちの挑戦」(2015年1月6日NHK仙台放送局が放送)は、その活動に3年間密着したものです。毎週日曜の朝の「明日へ〜支えあおう」(2015年6月7日放送、前10:05)の中で放送されました。

 春は山菜、秋はキノコと自然の恵みを受けていた福島の山々。放射能に汚染され、人影が消えてしまいました。「人生が狂った」とつぶやく住民の姿は、福島のいまを物語っています。

 甘んじているわけにはいきません。番組は、何人もの生物学者が山に分け入り動物の調査を丹念に続けているさまを追います。魚のセシウムの測量をするのは2人の学者。鈴木譲・東京大学教授は飯舘村のコイを、中嶋正道・東北大学教授はヤマメを対象に分析します。

 石田健・東大教授は、放射線量が高かった浪江町赤宇木(あこうぎ)で捕獲したウグイスに、おできができていることが気になっていました。

 研究者たちは「生き物のことをそのまま人間にあてはめるわけにはいかないが、何らかの影響を考えないわけにはいかない」と推量します。

 浪江町の渡部典一さんは牧場主でした。政府は牛の殺処分を決めましたが、渡部さんは拒否します。牛たちは、冬場は渡辺さんが運ぶ餌を食べていますが、夏は汚染された草をはんで生き延びてきました。

 「牛がいることで村人の気持ちは救われる。生きているものがいることでホッとする。お墓参りに帰ってきて、何も動いているものがいないのは不気昧でしょ。村を死なせない」。渡部さんの言葉は切実。同時に力強い意思がにじみます。

 家畜と放射能の影響を調査・研究する岡田啓司・岩手大学准教授は「国が研究センターをつくるべきだ」といいます。科学者たちの共通の要求です。放射能の問題を追跡する責任を投げ出したまま、原発の再稼働に向けて走りだす国への痛烈な批判となっています。

 低線量被ばくという、未知の問題に立ち向かう、研究者と住民。両者が手を携えた息の長い地道な試みは貴重です。原発を追い続けるNHKスタッフの熱意がこもった一作です。

(江)

(「しんぶん赤旗」2015年7月6日より転載)

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