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原発事故リスク費ごまかし・・電源別コスト、経産省試算どうみる/立命館大学教授・大島堅一さんに聞く

 電源別の発電コストを見直している経済産業省が「発電コスト検証ワーキンググループ」で新たな試算を提示しました。2011年の前回試算で、「コスト等検証委員会」委員を務めた立命館大学教授の大島堅一さんに原発や再生可能エネルギーなど発電コストの問題点を聞きました。

(中東久直)

 

■前回の算式を変形

genpatu-kosuto-sisan ──30年時点の原発発電コストを1キロワット時当たり「10・1円以上」と試算しますが…。

 原発の発電コスト項目の一つ、「事故リスク対応費用」の計算の仕方が変わっています。前回は、損害費用を約5・8兆円と算定(モデルプラントベース)し、原子力全事業者が40年間で積み立てる「共済方式」。損害費用(年間)を全事業者の発電電力量(年間)で割るという非常にシンプルな考え方です。

 ところが今回は、事実上、事故発生頻度方式に変えてしまいました。前回の算式を変形させ、2010年度に稼働していた「50基×40年」を「2000炉・年」に1回事故が起きた場合に対応することを想定していたと読みかえます。

 そして、原子力規制委員会の新規制基準に対応した「追加的安全対策」によって、事故の確率が半分の「4000炉・年」になるとしています。

 事故発生頻度方式に変えているのに、経産省は「共済方式」だとごまかしています。だれも実証できない事故発生確率論では、国民的に合意が得られないと判断しているからだと思います。

 今回の方式で計算すると、膨らむ賠償・除染・廃炉費用は約9・1兆円(東京電力福島第1原発事故の損害費用約12・2兆円から補正)と算定しているのに、「事故リスク対応費用」コストは前回の1キロワット時あたり「0・5円以上」から同「0・3円以上」に下がってしまいます。

 ──前回方式の計算だとどうなりますか。

 「事故リスク対応費用」コストは1キロワット時当たり0・8円くらいですね。それと問題なのは、コストを計算する場合の分母はどうするかということです。今回の計算式では、分母を「モデルプラント1基の年間発電電力量」とします。それは今後の原発再稼働をどのように見込むかを隠すためのごまかしです。

 原発のコストをめぐって、なんのめども立っていない使用済み核燃料の再処理・処分など核燃料サイクル費用や廃炉費用は不確実で、未知数です。膨らむ方向なのは確実です。

 これらのことがあまり強調されず、国民の目がいかないようにしているのはおかしい。

■再生エネは下がる

 ──結局、原発コストは「低い水準」にあるとして政府は原発固執の姿勢です。太陽光や風力発電など再生可能エネルギーのコストは妥当でしょうか?

 2030年時点の太陽光(住宅)は1キロワット時当たり12・5〜16・4円、太陽光(非住宅)は同12・7〜15・5円、風力(陸上)は同13・9〜21・9円となっています。ドイツはすでに太陽光で同13〜14円、風力で同10円を切るくらい。11年の前回試算のときも委員会で「国際的にみて高すぎる」と指摘しました。今回さらに高くなっているのはどういうことなのでしょうか。

 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の利潤相当分を「政策経費」としてコストに入れています。普及を加速させるためのものなのに「政策経費」として入れるのは違和感があります。再生可能エネルギー分野はこれからどんどん伸びる技術で、コストはどんどん下がっていく方向だと強調すべきです。

(「しんぶん赤旗」2015年5月11日より転載)

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