「原発の新規制基準に適合したから、安全というものじゃない」「もっと大きな枠組みで、福島原発事故を肝に銘じて(原発の是非を)国民的に広く議論しなくては」。原発敷地内の活断層評価にかかわる地質学者が話していました。
今月、都内であった原発行政と科学をテーマにした学習会でのことです。「住民の避難計画など(新規制基準から)いくつも落ちている」と、審査のあり方に疑問を投げかけていました。
この時、大事な指摘がされていると紹介されたのが、原発の危険性を指摘して関西電力大飯原発の運転差し止めを命じた、昨年5月の福井地裁判決でした。福島原発事故を受けて、憲法で保障された人格権を最優先に判断し、行政法規や基準に左右されずに判決を下すと宣言しました。
これと対照的なのが、九州電力川内原発の運転差し止めを求めた住民の仮処分申請を却下した先日の鹿児島地裁決定。判断の大前提は、新規制基準に「不合理な点は認められない」としたことです。多数の専門家によって「相当期間・多数回にわたる検討・審議」を経て作られた基準だからだと。
原発の安全性は、行政が集めた専門家の判断に任せればいいとした、過去の判決が思い起こされます。しかし、それが大きな間違いだったことは、福島原発事故が明らかにしたのではないのか。
先の学習会では、原発回帰の動きを強める政府に対し、強い批判の声が上がりました。過去の事故から「何も学んでいない」と。繰り返してはいけないことです。
(「しんぶん赤旗」2015年4月27日より転載)