関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)に対して福井地裁は4月14日、「運転してはならない」として再稼働を差し止める仮処分決定を下しました。日本共産党の小池晃政策委員長は、「画期的な決定」だとして、再稼働の断念を求める談話を発表しました。
樋口英明裁判長は、原子力規制委員会が策定した原発の新規制基準について、「緩やかにすぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されていない」「合理性を欠く」と指摘しました。関電は保全異議の申し立てや本裁判で決定を覆すことができなければ、法律上は再稼働できなくなりました。
仮処分を申し立てていたのは、県内の3人と関西圏の6人の計9人で、いずれも原発から250キロ圏内の住民。うち4人は、住民側が昨年5月の一審(福井地裁)で勝利した大飯原発3、4号機再稼働差し止め訴訟の原告でもあります。
決定では、原発の耐震設計で想定する最大の揺れである基準地震動を問題視。(1)この10年足らずの間に四つの原発で基準地震動を超えたケースが5回ある(2)過去の限られたデータから平均的な値を算出して策定している―として「実績のみならず、理論面でも信頼性を失っている」と指摘しました。
また、関電が見直すたびに基準地震動を引き上げてきたことに対しても、「根本的な耐震補強工事がなされないまま」だと批判しました。
そのうえで、新規制基準は適合すれば深刻な災害を引き起こす恐れがないと言える厳格な内容ではなく、「住民らが人格権を侵害される具体的危険性が認められる」と結論づけました。
関電は再稼働の前提となる新規制基準への適合性審査を原子力規制委員会に申請しており、高浜3、4号機が「適合」したとされる審査書が決定されていました。
申し立て人の1人の松田正さん(65)=坂井市=は福島の被災者の人たちに思いを寄せ、「この決定が福島の人たちへの、せめてもの励ましになればと思う」と話しました。
新規制基準を全否定/福井地裁決定 「安全思想と相容れない」
関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)に対して福井地裁が下した再稼働差し止めの仮処分決定は、昨年5月の関電大飯原発3、4号機(同県おおい町)に対する再稼働差し止め判決に続く画期的な判断です。
仮処分で差し止めを認めたのは初めてで、すぐ効力を発し、関電の異議申し立てや本訴で決定が覆されない限り、再稼働はできなくなりました。
決定は、規制行政の根幹をなす新規制基準自体を「合理性を欠く」と断じ、高浜3、4号機だけでなく、全国の原発再稼働の前提となる審査の不備を厳しく指摘しました。
関電はこれまで原発で想定する最大の揺れ(基準地震動)をたびたび引き上げてきましたが、決定は「根本的な耐震補強工事がなされることがないまま」だとして「安全設計思想と相容れないもの」だと厳しく批判しています。
また、基準地震動を下回る揺れでも、外部電源や給水ポンプの損傷で炉心損傷事故に至る危険性も指摘しているほか、使用済み核燃料についても「(原子炉)格納容器のような堅固な設備によって閉じ込められていない」と危険性を指摘しています。
そのうえで、事故が起これば、「取り返しのつかない損害を被るおそれが生じる」として人格権が侵害される危険性を指摘して差し止めを認めています。 (福井県・山内 巧)
高浜原発をめぐる動き
1974年11月 関西電力高浜原発1号機が運転開始
75年11月 2号機が運転開始
85年1月 3号機が運転開始
6月 4号機が運転開始
2011年3月 東京電力福島第1原発事故が発生
12年2月 3号機が停止し、全4基が定期検査入り
13年7月 関電が3、4号機の再稼働に必要な審査を原子力規制委員会に申請
14年5月 福井地裁が大飯原発3、4号機の再稼働を差し止める判決。関電は控訴
12月 住民側、福井地裁に高浜3、4号機と大飯3、4号機差し止め仮処分申請 規制委が高浜3、4号機の審査書案を了承。「新基準満たす」と判断
15年2月 規制委が高浜3、4号機の審査書を正式決定
3月 関電が高浜1、2号機の審査申請。運転40年を超える原発で初 高浜町議会が再稼働に同意
4月 福井地裁が高浜3、4号機の再稼働を差し止める仮処分決定
(しんぶん「赤旗」2015年4月15日より転載)