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「帰村」2年 福島県川内村(上)・・賠償切られ生活限界

雪の重みで一部が壊れた倉庫の前に立つ久保田昭さん=3月6日、福島県川内村
雪の重みで一部が壊れた倉庫の前に立つ久保田昭さん=3月6日、福島県川内村

福島県川内村が東京電力福島第1原発事故による避難からの帰村を2012年4月に始めてまもなく2年。実情と帰村の課題を探りました。           (柴田善太)

「蓄えが底ついたら、ものごいか泥棒するしかねえかな」

福島第1原発から約21キロ地点、旧緊急時避難準備区域に自宅のある久保田昭さん(77)は、雪の重みで壊れた倉庫を直しながら冗談まじりに話し始めました。

月10万円の東電の賠償が12年8月で打ち切られ収入は月約5万円の国民年金だけです。12年4月に自宅に戻るまでの避難生活で100万円、帰ってから自宅の玄関周りを除染するためアスファルトにして80万円かかりました。いずれも東電から賠償されていません。

コメ、野菜をつくる農家でしたが、農業はやめるといいます。避難で機械類が動かなくなり、ビニールハウスも骨組みだけの状態。修理には相当なお金が要ります。農業再開には肥料代約30万円など先行投資も必要です。

お金使わない

久保田さんは「無理して作ったって食べてもらえねえ。消費税は上がるし、余計なことしないで、お金使わずじっとしている方がいい」と話します。

川内村は福島第1原発20キロ圏内の居住制限区域と避難指示解除準備区域、20キロ圏外の旧緊急時避難準備区域の三つに分けられています。旧緊急時避難準備区域の住民が8割を超えています。この区域では現在、東電から何の賠償もありません。

新しい支援を

帰村せずに仮設住宅で暮らす住民の生活も大変です。家賃は要りませんが水光熱費は自己負担。仮設住宅入居は現時点では15年3月までとされています。

「電気、ガス、水道代が払えない人も出てきている」というのは郡山市南一丁目仮設住宅で川内村住民の取りまとめ役をしている志田篤さん(65)です。

志田さんは避難住民の生活の大変さとして、▽3世代世帯だったのが、若夫婦の避難などで二重、三重生活になり出費がかさむ▽村の生活はコメ、野菜は自給自足。水も井戸水でただ。それらが全部お金がかかるようになった▽自宅に帰らなくても電気代基本料金など維持費がかかる・・と指摘します。

志田さんはいいます。

「言葉は悪いけど、賠償打ち切られて避難住民はこれから難民化していくよ。新しい生活支援制度がどうしても必要だ」
(つづく)

川内村の帰村状況

村は週4日以上、村の自宅で生活する人を「帰村者」として、完全帰村者と分けて集計しています。 2013年10月時点で「帰村者」は1455人(うち完全帰村者535人)で、住民票を村に置く2766人の5割を超えました。今年3月4日時点の完全帰村者は576人。

村の小学校に通っているのは住民票のある114人中24人、中学校では57人中16人。
(13年5月時点)

緊急時避難準備区域・・東京電力福島第1原発から20~30キロ圏内で、大量の放射性物質の放出に備え避難の準備をするよう政府に求められた地域。2011年4月に設定、同年9月末に解除されました。川内村の一部を含め5市町村が対象になりました。

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